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おおいたをたのしむ

2026年10月30日

今日はどんな作品=景色に出合える?
豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

大分県の国東(くにさき)半島、その北西部に位置する豊後高田市の長崎鼻。周防灘に丸く突き出したこの岬は、海と森に囲まれた自然豊かな場所。海水浴やキャンプを楽しめるほか、春には2700万本の菜の花、夏には140万本のヒマワリが咲き誇り、多くの人が訪れています。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

長崎鼻リゾートキャンプ場を歩くと、アーティストによる作品がそこかしこに点在。「花とアートの岬 長崎鼻」の別名のとおり、海を眺め、森を歩き、花を楽しみ、キャンプをする。大自然の中にアートが溶け込み、そこで作品と出合えることが、この場所ならではの魅力です。
そんな長崎鼻に、訪れるたびにその瞬間だけの景色に出合えるユニークな美術館があります。天気や時間、人の動きによって表情を変える「不均質な自然と人の美術館」です。2020年にオープンして以来、SNSでも話題を集めています。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

光が追いかけてくる!? 自然と人がつくる、“その日だけ”のアート

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

キャンプ場の一角に見える、独特な外観の建物に入ると、館内は3つの部屋に分かれています。早速、1つ目の部屋へ。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

真南を向いた、真っ白な壁に囲まれた「太陽と月の部屋」。一歩足を踏み入れると、閉じていた288個の小窓が一斉に開き、まぶしい太陽光が差し込んできます。
窓から取り込んだ自然光がスポットライトのよう。その光の中に立ってみると……あれ? 歩くと光がついてくる!?
人の動きに合わせて小窓が開閉し、床に光を落とします。さらに、人の動きに合わせて日なたが移動し、光と人の動きに呼応してBGMで流れているピアノの音も変化していくのです。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ 今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

「次はどこに光が来るんだろう」と歩いてみたり、光を追いかけてみたり。つい楽しくなって、気がつけば見る側から、作品に参加する側になっていました。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

もちろん、太陽はずっと同じ場所にあるわけではありません。雲の切れ間から太陽が顔を出した瞬間、突然、部屋の中に光が現れることも。時間が変われば光の入り方も変わり、季節や天候によっても見え方は違います。つまり、いつ訪れても同じ作品に出合えるとは限らないのです。

「不均質な自然と人の美術館」は、自然やそこにいる人の動きによって刻々と表情を変えていく、テクノロジーを介したアート表現を楽しむメディアアートミュージアム。福岡を拠点に活動するクリエイティブ・ラボ「anno lab(あのラボ)」が手掛けています。
実はこの「太陽と月の部屋」は、2022年に第25回文化庁メディア芸術祭アート部門大賞を受賞した作品。高い評価を受けたアートでありながら、アートについての難しい知識がなくても、まずは「光が動いた!」という驚きから楽しめます。

光と人の動きがつくり出す空間にすっかり引き込まれていると、スタッフの高嶋孝行さんからこの美術館についてお話をうかがうことができました。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

「今見ていただいたように、どこにでもあるものではなく『この長崎鼻でしか表現できないもの』をアーティストの方々が作品につくりあげたことが、この美術館の大きな役割なんだと思います。最初から仕組みを説明してしまうと自分で想像する楽しみがなくなってしまうので、ご要望やタイミングに合わせてご案内しています」と高嶋さん。

海も風も、長崎鼻の表情が作品になる

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

2つ目の「海の部屋」は、錯視を利用した作品。高速で水の玉(ウォーターパール)を発生させる特殊な噴水と、超高速で発光するプロジェクターを組み合わせています。長崎鼻の潮位や天気の情報をもとに、特別な方法で水の玉にプロジェクションマッピングを行うことで、水の玉が空中に浮かび、自由に動き回っているように見える不思議な体験を演出しています。
取材したこの日は機器がメンテナンス中だったため、実際に見ることはできませんでした。
(※最新の展示状況は公式サイト等をご確認ください)

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

3つ目の「森の部屋」は、真っ暗な円筒型のシアターのような空間。森のざわめきや鳥の鳴き声がサラウンドで耳に伝わってきます。壁面には、生命が生まれ、繁殖し、消えていく様子を表現したアニメーションが映し出されます。「ジェネラティブ・アート」という手法でつくられた作品です。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

アニメーションの動きや聞こえてくる音は、この美術館の周りの風力と風向きの情報を反映したアルゴリズムによって生成されています。この部屋の表情も、その日の自然によって変化します。さらに、鑑賞する人が立つ位置によって、音の動きも変わっていきます。自然の動きがそのまま作品の変化につながり、そこに人の動きが加わることで、さらに姿を変えていく、不思議な作品です。
ほかにも、世界的に活躍する音響アーティスト・黒川良一氏とのコラボ作品として、豊後高田市の中山仙境をモチーフにした、見ごたえのあるシアター作品もお見逃しなく。迫りくる中山仙境の険しい山々が目の前に飛び込んでくるような迫力を体感できます。

同じ作品には二度と出合えないから、また行きたくなる

美術館の作品というと、いつ訪れても同じ状態で見ることができるものを思い浮かべるかもしれません。しかし、「不均質な自然と人の美術館」は、そうではありません。
雲の流れや海の波、風の音など、自然の中にいると、ついつい長い時間見とれたり、耳を澄ませたりしてしまう経験があると思います。この美術館では、そんな自然の変化を、短い滞在の中でもさまざまに感じることができました。
太陽の位置も、風の強さも、天気も、そこにいる人も、毎回違う。だから、ここで生まれる作品も、その日、その瞬間だけのものになる。「不均質な自然と人の美術館」が大切にしているのは、そんな同じ状態にはとどまらない自然の美しさです。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

高嶋さんのおすすめの時間帯は、「太陽と月の部屋」を見るなら15~16時ごろとのこと。「斜めから太陽の光が入ってくる夕方近くは、光のラインが濃く見えてきれいなんです」と教えてくれました。
雲が多いと光の筋が見えない日もあれば、淡い光芒が差し込み、柔らかな空間に包まれる日もある。「森の部屋」の音も、強風が吹き荒れる日は激しくなる。デジタルアートでありながら、その日の天気や気候に左右される、“運”によって見え方・聞こえ方が違うというのが、この美術館の面白さでもあります。
今日は、どんな光が差し込んでいるだろう。風はどんな景色を生み出しているだろう。今の季節なら、どんな表情を見せてくれるだろう。そして、自分が動いたら、景色はどう変わるだろう。「作品を見る」というより、「その瞬間にしか生まれない景色」を体験する。そんな気持ちで訪れてみれば、アートに詳しくなくてもきっと楽しめるはずです。

今日はどんな作品=景色に出合える? 豊後高田市「不均質な自然と人の美術館」へ

今日はどんな作品=景色に出合える? その答えは、長崎鼻に着いてからのお楽しみです。

不均質な自然と人の美術館
〒872-1207 大分県豊後高田市4060 長崎鼻リゾートキャンプ場内
TEL 0978-23-1860(豊後高田市観光まちづくり)
WEB:https://nature-and-human.art
Instagram:https://www.instagram.com/nature_and_human.art/

WRITER

  • 牧 亜希子
  • 牧 亜希子記事一覧

    planner/writer。特に大分県の観光情報が得意な自称「勝手に大分県の魅力案内人」。友人からのリクエストで旅行プランを立て、アテンドすることも。 特技/取材や撮影に行くことが多いにもかかわらず、「超」が付くほどの雨女。私の行き先ではかなりの確率で降らせます。取材先の皆様、ご了承くださいませ。

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