おおいたをたのしむ
2024年03月22日
真心を込めて、茶どころ杵築からお届け
幻の国産紅茶「きつき紅茶」
紅茶といえば、インドやスリランカなど外国産のイメージがありますが、大分県内で国産の紅茶を生産する紅茶農家さんがいるのをご存知ですか?
今回は、一度途絶えてしまった紅茶の生産を見事に復活させた「きつき紅茶」の、
きつき紅茶 園主 阿南 康児さん
出会いはティーポットで淹れたお茶
大分県由布市出身の阿南さん、高校時代は県外で寮生活を送っていたそう。当時は紅茶といえばティーバッグが主流でしたが、あるとき先生から「紅茶好きな人はおいで」と部屋に呼ばれティーポットで淹れる紅茶を飲んだところ、一瞬で虜に。あまりのおいしさに「自分達が飲んでいたものとは全く違う、同じ紅茶でも淹れ方でこんなに変わるのか!」と衝撃を受けたんだとか。
「この出会いが、紅茶好きのはじまり」と、阿南さん。
お話を伺いながらいただいた紅茶と、阿南さんの奥様・紀子さんお手製のスイーツ。
この紅茶もティーポットで淹れてくださいました。
まるで、カフェに来たかのようなおもてなしにキュン!
甘いものと紅茶って最高ですよね。
そうだ、自分達で国産紅茶を復活させよう
大学生になっても、阿南さんの紅茶好きは変わらず。
阿南さんが大学生の頃は、コーヒー全盛期。まわりの友達は喫茶店に行くと必ずといっていいほどコーヒーを注文するなか、阿南さんは紅茶一筋だったそう。
当時はまだティーバッグで淹れる紅茶が多かったそうですよ。
その後、奥様である紀子さんと出会います。
当時の事をこう話してくれました。
「彼女(紀子さん)は、ティーポットで紅茶を淹れてくれたんですよ。色々話をするうちに、彼女の祖父の松山
しかし、その話を聞いた頃には残念ながら杵築市の紅茶作りは途絶えていたそう。
杵築市が紅茶生産を始めたのが、1952年。その後、1971年に発令された紅茶輸入自由化(※)によって国産紅茶を作っていた多くが倒産を余儀なくされたんだとか。
※紅茶輸入自由化:紅茶は、かつて輸出品として生産されていました。第二次世界大戦後、しばらくは輸入は制限されていたそうですが、自由化されると国産紅茶よりも外国産紅茶の方が安く手に入るため、国内で販売される紅茶の多くが輸入品に切り替わったのです。
そんな紅茶輸入自由化の影響で、紀子さんの祖父・意佐美さんの農園も多額の負債を抱え、紅茶作りが途絶えてしまったというのです。
阿南さんは、紀子さんの話を聞き「杵築の紅茶作りを復活させたい」と思ったそう。
試行錯誤のお茶作り
結婚後、阿南さん夫妻は杵築の茶園を買い戻し、緑茶を栽培しながら紅茶の研究を始めます。
紅茶輸入自由化の影響を知る方からは紅茶栽培を反対や心配する声もあったそうですが、”私達は紅茶が作りたいんだ”と当時の組合に相談して、1995年から本格的に紅茶作りをスタート。
残されていた紅茶品種のお茶の木(
作り始めた当時は、全国の紅茶専門店に出来上がった茶葉を送って紅茶の評価をしてもらっていたそう。
「大阪のとある紅茶専門店さんとは、今でもお付き合いがあります。こちらからも茶葉を送るし、向こうからもめずらしい茶葉を送ってくれたり。そういう繋がりも大事にしています」と、阿南さん。
紅茶が繋いでくれたご縁って素晴らしいなと思います。
こちらは、阿南さんが紅茶を復活させる前(今から約60年程前)に販売していたという紅茶缶。
中には茶葉も入っています。
レトロ感たっぷりなデザインがかわいいです!
きつき紅茶ってどんな紅茶?
現在、阿南さんが作る紅茶は9商品。
- べにたちわせ
- 温厚な味で、アッサム系の芳香。オレンジ色の水色が美しく、ストレートでも、濃い目に入れてミルクティーにしても美味
- べにひかり
- インド・日本の交配品種に更に中国種を交配した品種の紅茶。爽やかな清香があり、切れの良い味わい
- べにふうき
- インドダージリンからの導入品種と「べにほまれ」を交配した新品種で、濃い紅色の水色と高い芳香が特徴。味は濃厚で、ミルクティーにしても美味
- べにさやか(みなみさやか)
- アッサム種とコーカサス種の交配による独特の花香とさっぱりとした滋味
- マイルドブレンド
- 苦味渋みの少ない品種をブレンド
- 水出しブレンド
- 主に夏向けとして、水出しにあう品種をブレンド
- 匂い桜花入
- 香り高い匂い桜の花を乾燥し、ブレンド。ほんのりとした桜の香りが紅茶の味わいを引き立てる
- 豊後梅花入
- 大分県の県花である豊後梅の花を乾燥し、ブレンド。きりっとした香りが魅力
- レモンブレンド
- レモングラスとレモンバーベナを乾燥ハーブとしてブレンド。ハーブ香の好きな方におすすめ
茶葉のみの販売と、手軽に飲みやすいティーバッグでの販売もしているそう。
こんなにたくさん種類があるなんて、紅茶の世界も広いですね。
そもそも、紅茶ってどうやって作られるんだろう?
阿南さん教えてください!
「収穫した茶葉は15~16時間、薄く広げて寝かせる
想像していたよりも過酷な作業で驚きました。
なかでも、
茶畑は、春になるとこんなに桜がきれいに咲くんだとか。
阿南さんも、桜の季節が楽しみなんだそうですよ。
おいしい飲み方
阿南さんおすすめの紅茶の味わい方をお聞きしました。
「一番のおすすめは、やはりベストシーズンの香り高いものですね。紅茶用語で『クオリティーシーズン(質の高いシーズン)』というのがあって、たとえば、ダージリンだったら2番茶のセカンドフラッシュがおすすめです」。
紅茶初心者にはちょっとハードルが高いかも、と思っているとこんなアドバイスが。
「普段ティーバッグで淹れた紅茶を飲んでいるという方は、茶葉を買ってティーポットで淹れてみるというのも1つの楽しみ方ですよ」と、紀子さん。
それなら気軽に楽しめそうですね!より紅茶が楽しめそうです。
こんなところでも
「きつき紅茶」は、以前カテテでも取材した「ハルチョコレート」や「文ヶ学」でも使われているそうですよ。
ハルチョコレート
https://oita-katete.pref.oita.jp/web_magazine/haru_chocolate/
文ヶ学
https://oita-katete.pref.oita.jp/web_magazine/bunkagaku/
また、明治7年創業杵築市の老舗蔵元「中野酒蔵」では、人気のちえびじんシリーズ「紅茶梅酒」の原料として「きつき紅茶」の「べにふうき」などを使用しているとのこと。
大分県内でも取り扱いをしているところが多く、杵築市の「杵築ふるさと産業館」や大分市「 Oita Made 」などでも販売しています。
みなさんも紅茶でほっと一息、リラックスタイムを過ごしてみてはいかがでしょうか。
- きつき紅茶
WRITER
- 日名子 真衣記事一覧
猫とパンを愛してやまないママライター。食べ歩きと写真を撮ることが趣味です!美味しいものを探して、相棒のカメラと一緒に大分県内を旅します。将来の夢は、縁側のある家で猫とのんびり暮らすこと。
きつき紅茶
1957年、輸出用として杵築市で紅茶栽培が開始。1971年に発令された紅茶の輸入自由化によって、一般の人でも外国産紅茶が安く買えるようになったことで国産紅茶農家の多くが大打撃を受け、杵築の紅茶も途絶えてしまいました。そんな紅茶を復活させるべく、立ち上がったのが「きつき紅茶」の阿南康児さんです。阿南さんの生産する紅茶は、大分県内のカフェや洋菓子店・お酒の原料などでも幅広く使われています。