おおいたをたのしむ
2022年09月16日
本を楽しむ暮らし。大分市中心部のとっておき書店・図書館。
少しずつ夏の暑さも和らぎ、秋の気配を感じる季節となってきました。今年の秋は読書の秋にしてみませんか?
今回は田中 昴さん(大分大学 3年生)と、大分市中心部にある書店、図書館を巡ってきました。
カモシカ書店
大分駅から歩いて10分ほど、大分市中央町にある「カモシカ書店」。
入り口の看板には「入りにくいのは最初だけ」の文字。思い切ってビルに足を踏み入れました。
入り口には本がぎっしりと並べられれいて、秘密基地のような雰囲気。螺旋階段を登ると、2階に鉄扉の入り口がありました。
鉄扉の先に広がる空間は入り口からイメージしていた店内よりも広く、コーヒーと本の香りが入り混じってなんだかノスタルジックな気持ちに。
カモシカ書店は新刊の他にも古本を扱っており、店内には新旧さまざまな本が並んでいます。
オーナーの岩尾さんは18歳で上京し、大学卒業後は書店や映画会社に勤務していたそう。それらの仕事に携わる中で、将来性を感じたのが書店だったそうです。また、東京の喫茶店で働いていた際に、俳優、漫画家や歌人、さまざまな人が集まる光景が好きで、そういう場所を作りたいと思ったのが今のカモシカ書店ができるきっかけなんだとか。
日々、本を楽しむ人、勉強する人、語らう人など様々な人が訪れるカモシカ書店。いまやカモシカ書店は書店としてだけでなく、多くの人の“居場所”になっているのだなと感じました。
カモシカ書店さんで特に注目なのは古本。大分では珍しいオールドブックス(古本でしか手に入らない絶版本)やレアブックス(絶版であり、滅多にみることのできない高額な本)も取り扱っています。
書店の一角にあるガラスのショーケースには、100年近く前の書籍も並んでいます。公用語の変化がない日本の書籍は、100年前に書かれたものでも未だに読むことができます。日本に住む私たちにとっては当たり前のことのようですが、世界から見ると数少ない国の一つ。本を通して100年前の人とも語らうことができることに、ロマンを感じずにはいられません…!
現在とは違う印刷方法や紙の質で製造された本の装丁には、その時代のデザインが現れ、親子で訪れたお客さんのお母さんが懐かしそうに本を手に取る場面も。
カモシカ書店を訪れた際はこのショーケースやラックにもぜひ目を通してみてください。
カモシカ書店の本の仕入れ方はいわゆる書店員さんのイメージとは異なっており、コレクターの方から直接買い取ったり、古本業者市で買い付けをすることで仕入れているそうです。その働き方はまるでトレジャーハンターのよう。「本の仕入れは実際に読んで触って売ってという経験をしていくしかない。ただそれがすごく面白い」と語ってくださった岩尾さん。サイン入りの本やセピア色に染まった数々の本たちは、カモシカ書店を通して、また誰かの宝物になっていくんだなと思いました。
店内のカフェスペースも人気で、開店後すぐにお客さんでいっぱいになるほど。9月からのおすすめはパイナップルシェイク、バニラシェイクだそう。特にパイナップルシェイクは濃厚なミルクの味わいの中にも爽やかな酸味と甘みを感じる一杯でした。カフェとしても気軽に利用でき、勉強や語らいにもピッタリの空間です。(個人的にはキーマカレーもおすすめです!)
古本と新刊。同じ本でも全く別世界。
「買わなくてもいい。カモシカ書店をきっかけに古本の世界を知ってほしい」
色んな世界が混ざり合った「カモシカ書店」にぜひ訪れてみてください。
- カモシカ書店
-
〒870-0035
大分県大分市中央町2丁目8−1 2F
HP https://kamoshikabooks.com
Instagram https://www.instagram.com/kamoshikabooks/
バレイショテン
大分駅から歩いて10分ほど、金池町にあるバレイショテン。
お店の名前の由来は、ゴッホの絵画作品『ジャガイモを食べる人々』からのインスピレーションだそう。
オーナーの後藤さんにとっての『本』は、この絵の中のジャガイモのように日常の中でこれだけあればいいものであり、そこから「ジャガイモ=バレイショ」と「本屋=ショテン」を掛け合わせバレイショテンと名付けたそうです。
後藤さんが本屋で生きていこうと思ったきっかけは、大学卒業後吉祥寺で働いた本屋でした。勤めるきっかけは住んでいた自宅から近かったからだそうですが、面白いことにこれがその後の人生を決める出会いとなりました。その本屋さんには書店員さん一人一人が自由に陳列できる本棚があり、「自分で選んだ本が動いてくれる、売り上げにつながっていくのが楽しい」と感じたことから、書店の魅力にどっぷりとハマったそう。
「本を読めるお店だから静かで少し離れた隠れ家のような店舗にしたい」と探して、辿り着いたのが今の物件。
元々は工事現場の事務所だったそうです。床は後藤さん自らモルタルで施工。店内に入ると目を惹く四角柱型の本棚は、見通しがいいことで窮屈な感じを持たせないように工夫されており、後藤さんのこだわりが詰まった店内となっています。
店内には後藤さんがセレクトした新刊が2000冊ほど並んでいます。個人の書店だからこそ、大きな本屋さんでは見つけられずにスルーしてしまうような本との出会いがあります。
インスタグラムでは入荷した本の情報が発信されており、後藤さんが特におすすめなものなども投稿されていますので、読む本に迷っている方はぜひ参考にしてみてくださいね。
バレイショテンで新刊を取り扱うのは、「この先の本の文化のため」だと語る後藤さん。
「新刊が売れなくなると、新しい書籍が出版されなくなる。だから新刊を扱う」という後藤さんの本への愛情や、今を映した新刊の魅力を感じることができました。
併設されたカフェでは「ハニー・カフェ・コン・レーチェ」と呼ばれるハチミツとコーヒー、ミルクを合わせたドリンクや、後藤さんが手作りする季節のお菓子、アルコールも楽しむことができます。
通常メニューのチーズケーキは特に人気だそう。
後藤さんはスペインに巡礼した経験があり、当時バルで毎日のように食べていた「ボカディージョ」と呼ばれるスペインのサンドイッチもあります。
平日は12:00~22:00まで、水曜日はなんと18:00~24:00まで営業しています。
仕事帰りに、今日頑張った1日のご褒美に利用されるお客さまも多いのだとか。大通りから少し入った場所にあり、喧騒から離れて静かに過ごすことができます。
「色々な人に合うような本を選んでいますし、色々な人に来てほしい、普通の町の本屋でありたい」「ここに居ていいんだという、お客さまの居場所になればいい」と語っていた後藤さん。バレイショテンの居心地の良さは、後藤さんの包み込んでくれるような優しさが作り出しているのだなと感じました。毎日の中でどこか居場所が欲しくなった時、本とゆっくりと向き合いたくなった時、バレイショテンでゆったりとした時間を過ごしてみるのはいかがでしょうか。
- バレイショテン
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〒870-0026
大分県大分市金池町2丁目13番13号 リザータ金池102
HP https://bareishoten.com
Instagram https://www.instagram.com/bareishoten/
私設図書館 栗茶庵
大分駅から歩いて10分ほど、大手町にある私設図書館 栗茶庵。
なんと本への書き込みがOKという珍しい図書館です。
オーナーの宇野さんがこんな一風変わった図書館を作ろうと思ったのは、文房具屋さんの試し書きのメモを世界中から集めて本にしたという一冊に出会ったからだそう。そこから、書き込みのある本を集めた図書館、本に好きに書き込める図書館を思いついたそうです。
この書き込みOKには、オーナー宇野さんの「本を通して見えない方と交流ができたらいいな」という思いが込められています。
利用方法は、入店して館長さんに受付カードをもらい着席。退出の際に受付カードを渡し利用料金を精算という流れになります。館長さんは宇野さんのお父様で、寝てしまっていることもあるそうで、その場合は遠慮なく優しく起こしてあげてくださいとのことです。
本の中には前に読んだ方の感想、お父さんに宛てた手紙など、さまざまな書き込みがありました。
前の読み手の思いを感じることができますね。
こちらはマスコットキャラクターの「うさぎのくりちゃん」。
宇野さんの知人のウサギの名前クリちゃんからとったという店名の通り、店内には缶バッチやTシャツなどさまざまな「くりちゃん」グッズが並んでおり、中には宇野さんが自作したものもあります。
栗茶庵は元々は「うさぎのくりちゃん」のアンテナショップを目指していたそうですよ。
コーヒー等は無料(セルフサービス)。
読書や勉強など1人で集中できる空間で、学生さんの利用も多いのだとか。学生さんだと最大でも400円で利用できます。今回同行している田中さんもよく利用する場所の一つだそうです!
店内には受験生が書いたホワイトボードがあり、本への書き込みだけでなく、ここでも見えない方との交流がありました。ボード内でもドラマがあったりするんだとか。書き込みの中には、「ここに住みたい」など栗茶庵さんの居心地の良さが伝わってくる言葉もありました。
最近は手書きの文字でやりとりすることが少なくなっていますが、だからこその交流が楽しいですね。
前の読み手の書き込みが楽しめる本や資格勉強や受験勉強の捗る空間、くりちゃんグッズなど、たくさんの魅力がある栗茶庵。来館した際はぜひ気に入った本に書き込んでみてくださいね。
- 私設図書館 栗茶庵
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〒870-0022
大分県大分市大手町2丁目1−7 右 大手町ビル 2階
HP http://burstech.sakura.ne.jp/kurichan/toppage
Instagram https://www.instagram.com/booklibrarykurichan/
今回取材に同行した田中さんに感想をいただきました。
また、今回の取材の様子はオオイタカテテ(@oitakatete)のインスタグラムで公開しています。ぜひチェックしてみてくださいね。
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- 小島 直人記事一覧
竹田高校を卒業後、大分大学理工学部に進学し、大学院ではプラズマを専攻。高校、大学は実家から通える場所を選択するほど、大の竹田好き。父の影響で小学生の頃からカメラを始めている。大学院修了後はフリーのカメラマンとして竹田を拠点に企業の広告撮影、イベントやファミリー撮影、記念日の撮影などの活動を行なっている。
どのお店もそれぞれ全く違ったコンセプトで営まれていましたが、どの店主さんも「本に人生を支えてもらっている」という共通点が垣間見えたのが面白いなと感じました。
はじめて行った本屋さん、よく行く本屋さん、色々ありましたが、どの本屋さんでも知らない発見や「なるほど」と思わせられるような驚きがあり、とてもワクワクした取材でした。
今回取材で行った本屋さん、またプライベートで通いたいと思います!