おおいたをたのしむ
2023年01月24日
自分らしい生き方を見つける湯治シェアハウス 湯治ぐらし
「
鉄輪温泉が持つ可能性に魅せられ、大阪から大分へ移住した「湯治ぐらし」のオーナーの
菅野さん(左)と伊藤さん(右)
温泉に通い放題!実家のようにくつろげる場所
ロゴがかわいいこちらの一軒家が、今回訪れた「湯治ぐらし」。
女性専用のシェアハウスとして2020年に「湯治ぐらし1」をスタートし、現在では男性専用のハウスや、カップル、ファミリー向けの部屋など3軒を運営しています。
「湯治ぐらし1」は5部屋あり、最大5名まで入居可能。どの部屋もリラックスできそうな落ち着いた雰囲気♪
大分県内の各大学へ通う学生をはじめ、社会人、二拠点生活者、リモートワーカーの方などがここに暮らしているので、さまざまな属性の人たちに出会うことができます。
リビングに入ってすぐ出迎えてくれたこの
リビングはゲストや入居者同士がにぎやかに過ごすことも。共用スペースの掃除は入居者が当番制で担当しています。
お風呂はもちろん温泉!さらに徒歩3~5分圏内の2カ所の温泉も入居者は入り放題なので、毎日温泉に通うのも◎。これぞ温泉地のシェアハウスの醍醐味ですね。
また健康的な毎日になるようにと、温泉に加えて、ヨガやバランスボール、腸美活レッスンなど嬉しい催しも日常に取り込まれています。
ヨガ
腸美活レッスン
鉄輪温泉の無限の可能性に引き寄せられて
オーナーの菅野さんは無類の温泉好き。これまで全国200カ所以上の温泉地をめぐった中で、家族で訪れた鉄輪温泉が人生のターニングポイントになったといいます。
「温泉宿を切り盛りするパワフルな女性たち、湯治のPRイベントを運営する人たちのチャレンジ精神、マジックアワーに見た湯けむりがたなびく別府の絶景、共同温泉で出会った地元の人たちの温かさ…。都会にはない全てのものがそろっている場所だと感じたんです」と菅野さん。東京で長年がむしゃらに働いたのち、出産を機に子育てやこれからの人生を考えていた菅野さんにとって、何もかもを包み込んでくれるような鉄輪の土地柄にひとめぼれしたのだそう。
「湯治場は体を治すだけでなく、心が穏やかになったり、頑張っている自分を応援してくれる場所だと思います。何かを得たり、手放したり、いろんなバランスを整えてくれるのが温泉という装置だと私は思っていて。そんなふうに私が理想とする湯治のあり方をライフスタイルとして具現化している鉄輪の暮らしに、めちゃくちゃ感動したんです」。
こんな場所は他にはないと確信した菅野さんは、鉄輪旅行の4カ月後に移住を決意しました。
温泉のおかげで自分自身を取り戻すきっかけを見つけた菅野さんは、温泉や湯治場の魅力を広く伝えることと、いろんなことに頑張る若者にこそ心の洗濯をしてくれる湯治文化を知ってもらいたいという思いから、「湯治ぐらし」をオープンしました。
学生にとって「湯治ぐらし」で暮らす意義
入居者の伊東さんは、オオイタカテテの記事でおなじみの「BOND OITA」のメンバーの一人。京都出身の伊東さんはなぜ「湯治ぐらし」を住む場所に選んだのでしょうか。
「私がまちづくりやコミュニティに興味を持っていたことと、せっかく大分県に進学するなら温泉のことをもっと知りたいと思ったことが、数あるシェアハウスの中からここを選んだ決め手でした。また菅野さんに会って話をして、これまでの人生経験や、手掛けているたくさんの活動に刺激がもらえそうだと思ったんです」と、通学の利便性や自由度よりも、ここで生活することで得られる価値を選んだと語ります。
「湯治ぐらし」での生活の魅力をたずねると、「すぐに温泉に行けるのが最高です! それと、日常の中でホッとできる場所があることですね。私は寂しがり屋なので、帰ってきたら誰かがいてくれるので安心しますし、散歩中に近所の人と何気ない話が当たり前にできるのも、自分がこの土地に受け入れてもらえている感じがして嬉しいです」。
「湯治ぐらし」で暮らすことで、単に進学先の地域に住んだという感覚ではなく、“鉄輪に暮らしている”という実感が湧いたそう。県外から一人で大分にやってきて、将来の道に向かって悩み、もがく学生にとって、「湯治ぐらし」は心の拠り所となる大切な場所なんですね。伊東さんにとってシェアハウスの仲間だけでなく、オーナーの菅野さんの存在も大きかったそう。
「菅野さんは温泉や湯治を広めたいという信念を大事にしながら、周りの環境にも馴染むようにその思いを伝えたり、実行したりしています。そんな強い大人の姿を身近に見せてもらい、一つの生き方として学ばせてもらうことが多くあります」。
そんな菅野さんに背中を押されて、地域の人たちと交流をするためのイベント“蚤の市”を2022年に企画・実施することもできたそう。
菅野さんや地元の人とのつながりもでき、“鉄輪で生きている”ことを実感している伊東さんにとって、「湯治ぐらし」は大人になるための学びの場であり、経験の一部と捉えているとのこと。大分での暮らしを余すことなく大切に過ごしている伊東さん。さらにしっかりした女性に成長していくんだろうなと、勝手に母のような気持ちでお話をお聞きしたのでした。
入るだけじゃない!温泉×〇〇=新しい温泉のあり方
伊東さんが憧れる菅野さんが「湯治ぐらし」でどんな活動を展開しているのか、気になりますよね。
「湯治ぐらし」では、シェアハウスを拠点に温泉を活用したさまざまなコンテンツやプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。湯治を親しむコミュニティである「湯治女子」や「湯治男子」、食を通じた健康増進や地域交流の場、体調や体質に最適な温泉を有資格者がアドバイスする「みんなの保健室」など、ライフスタイルに関わる温泉との接点を導くコンテンツが目白押しなんです!
また、温泉を活用したビジネスを学生が創出する“温泉インカレ”を2023年春ごろから開始できるように準備中。学生の得意なことを温泉と掛け合わせてチャレンジできる土壌ができつつあります。
そんなたくさんの活動に共感した大手企業が「湯治ぐらし」をワーケーションの場として入居したり、東京理科大学のベンチャー企業が「湯治ぐらし」を実験場として温泉と物理学を掛け合わせた共同研究も展開中とのこと。温泉って入るだけじゃないんですね…!
「温泉はどうしても観光面のアウトプットしか表に出てこないんです。湯治文化が教えてくれることはまだまだたくさんあるので、その可能性に気付いてもらうことで新たな産業やサービスが生まれたら、雇用の拡大や鉄輪の活性化にもつながっていくと思います」。
浸かるだけにはとどまらない、温泉とのコラボが「湯治ぐらし」には張り巡らされています。
温泉のある暮らしで自分らしく生きる
最後に、菅野さんにとって鉄輪はどんな存在なのかを聞いてみました。
「子育ても仕事も自分らしくあることも全部諦めなくていい場所ですね。私にそう思わせてくれた温泉のことを伝えていくために、多方向から大分県の唯一無二の資源であることを知ってもらう活動を絶やさずにやり続けていくこと。私たちが便利で、健やかで、生き生きと素直に生きられる社会をつくり、子どもたちのために残していくことが私の使命だと思っています」と、これからの目標を熱く語ってくれました。
湯治ぐらしには、大分県への移住を検討している県外在住者やアクティブシニアの方からの問い合わせも増えているそう。これからの生き方を模索する幅広い世代の人たちの検索キーワードにヒットするのが「湯治ぐらし」が提案する暮らし方そのものなのかもしれません。
今まで知らなかった温泉の価値を教えてくれる「湯治ぐらし」。ふるさと大分県の温泉の個性をもっと理解するために、まずはフーっと力を抜いて自分を解き放てる推しの温泉を見つけて、ゆっくりと温泉に浸かる時間を暮らしに取り入れてみませんか。
- 湯治ぐらし
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〒874-0042 大分県別府市鉄輪東7-4
〒874-0042 大分県別府市火売1組 ほか
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WRITER
- 牧 亜希子記事一覧
planner/writer。特に大分県の観光情報が得意な自称「勝手に大分県の魅力案内人」。友人からのリクエストで旅行プランを立て、アテンドすることも。 特技/取材や撮影に行くことが多いにもかかわらず、「超」が付くほどの雨女。私の行き先ではかなりの確率で降らせます。取材先の皆様、ご了承くださいませ。