おおいたをたのしむ
2022年10月14日
大分県出身の大学生が探る、中津からあげの魅力と歴史!
中津といえば「からあげ」。そのイメージは大分県だけでなく全国的なものになっているのではないでしょうか?
今回は、大分県出身の大学生が中津市のからあげ専門店2店舗で「中津からあげ」の魅力とその歴史を取材してきました!
- 今回の行き先
- 大分県中津市
大分県の北西端に位置する大分県中津市。城下町であり「青の洞門」「羅漢寺」「福澤諭吉旧居」「中津城」などの文化財や歴史的建造物、市域南部には景勝地の耶馬渓がある観光都市です。中津市のソウルフードである「中津からあげ」は、ジューシーで旨味あふれる人気グルメです。
今回レポートしてくれたのは…
油布 藍里さん
大分市出身。上智大学2年。文学部新聞学科でメディア系を専攻しており、ゼミでは調査報道を主に学んでいます。中津からあげを本場で食べたことがないので、とても楽しみにしていました!中津からあげの魅力をインタビューできればと思います。
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ぶんごや本店
一店舗目は中津市上宮永にある「ぶんごや本店」さん。代表取締役の西郡 信喜さんにお話を伺いました。
- 油布さん(以下、油布)
- 今日はよろしくお願いします!今までからあげは一種類くらいしか食べたことがなかったのですが、種類がたくさんあるんですね。
- 西郡さん(以下、西郡)
- 種類はたくさんあります!スタンダードな「ももみ」「むね身」「ミックス」。「せせり」や「砂ずり」、「いなかどり(親どり)」など県外の方からするとあまり馴染みがないからあげもあります。定番は「ミックス」で、「もも」と「むね」の両方を楽しめますよ!女性人気ナンバーワンは「やげんなんこつ」ですね。
- 油布
- 種類の多さはからあげ専門店ならではですね!
精肉店時代から受け継がれてきた一子相伝の味
- 油布
- ぶんごや本店さんのこだわりを教えてください。
- 西郡
- 一番のこだわりは、一子相伝の味ですね。50年前に精肉店で会長が試行錯誤しながら作ってきた味を、少しずつ進化させながらも、ベースはしっかり守って受け継いできました。中津からあげの定義である「国産の鶏肉を使う」「醤油、ニンニク、生姜を使いしっかりお肉に味をつけ、何も付けずに美味しいからあげにする」「中津に本店を持つ」に則って、いつも美味しいからあげを提供することもこだわりですね。また、スタッフみんなで「からあげ一個に対しての付加価値をどれだけ付けていくか」というところも、日々取り組んでいます。
- 油布
- なるほど。そうやって美味しさが受け継がれているんですね!中津からあげの定義も初めて知りました。昔から中津からあげのお店をされていたのですか?
- 西郡
- 「ぶんごや」は元々精肉店で、私が小さい頃から父がからあげを扱っていました。中津は昔からからあげ屋さんが多かったんです。でも「中津からあげ」という名前ができて浸透したのは、B級グルメとかご当地グルメが盛り上がった頃からで、結構最近なんですよ。都会のテレビ局が中津のからあげ屋さんの多さに気づいて「からあげの街」として取り上げるようになり、そこから「中津からあげ」の歴史が始まりました。それまでは名称はバラバラで、「中津のからあげやさん」や「中津んからあげ」などと呼ばれていたんですよ。そこで知り合いのからあげ屋さん3店舗ほどを集めて「中津からあげの会」を作り、「中津からあげ」という名前で全国発信しようという取り組みを始めたんです。今では17店舗くらいが加入しています。
- 油布
- 東京でも「中津からあげ」はよく聞きます!ご当地グルメとして有名ですよね。中津からあげの魅力はなんですか?
- 西郡
- お酒のつまみにもご飯のおかずにもお土産にもなるところですね。中津人のソウルフードだと思います。
- 油布
- 確かに、味がしっかり付いていて、そのままでも、ご飯のおかずとしても美味しいです!
本場のからあげをパクリ。つい笑みこぼれてしまう美味しさです!
ニンニク、醤油、生姜のバランスが絶妙で、揚げたてのサクッ、カリッとした食感、噛むとジューシーな鶏肉の旨味が口いっぱいに広がります。
おかずにもおつまみにも最適な王道の中津からあげの味でした!やげん軟骨はコリコリとした食感がクセになります。女性人気ナンバーワンなのも納得の美味しさ!
生活の知恵が形を変えて中津を代表するグルメに
- 油布
- なぜ中津市はからあげが盛んになったのですか?
- 西郡
- 戦後の食糧難の対策として、中津市と豊前市、宇佐市に養鶏場がたくさん作られたことから、中津市には鶏が安く出回るようになりました。ただ、冷蔵庫がない時代だったので保存のために鶏を塩や醤油に漬けていたんですね。そういう文化があったところに、旧満州からの引き揚げ者の方が県北に「揚げる」という調理方法を伝えたことで、中津でからあげが作られて浸透していったそうです。そこから、とり天やチキン南蛮にアレンジされていったという説もあります。
- 油布
- そういう歴史があったんですね。からあげが一番最初に作られていたんですね。
- 西郡
- おそらくそうだと思います。調理法が地域ごとに変わっていく中で、下味がしっかりとついた中津のからあげが生まれたんだと思います。
- 油布
- 中津からあげはこうやって誕生したんですね。今回はありがとうございました!
西郡さんからお話を伺うことで、中津にからあげがこんなにも浸透している理由がわかりました。歴史的な側面、生活の知恵、伝来した調理方法があって、中津の方々の生活と昔から密接に関わっていたからこその「からあげ文化」なのですね。一子相伝の味「ぶんごや本店」に是非訪れてみてください!
- あげ処ぶんごや本店
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住所:〒871-0027 大分県中津市上宮永2丁目146−1
営業時間:11時00分~19時30分
定休日:月曜
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からあげの鳥しん
二店舗目は中津市宮夫にある「からあげの鳥しん」さん。代表取締役の角 信一さんにお話を伺いました。
好きを極めた20年間
- 油布
- よろしくお願いします!お店はいつ頃オープンされたんですか?
- 角さん(以下、角)
- 今年の6月でちょうど20年になります。からあげが好きで、若い頃から仕事をしながらいつかからあげで食べていけたらなと思ってました。
- 油布
- そこから20年続いているんですね!すごい。上京した時、住んでる場所の周りに中津からあげのお店が多くてすごく嬉しかったんです。
- 角
- 僕の友達も東京に何人かお店を開いた人がいますよ。みなさん美味しい中津からあげ屋を出店されています。ここ十年くらいはブームがきていて、東京でも「からあげのまち=中津」という認識がされてきていますよね。以前は大分の中津と言ってもピンときてくれなかったのが、今は中津といったら「からあげのまち」という認識をしてくれているので、からあげパワーすごいなあと感じています。
- 油布
- 中津にからあげ専門店は何店舗ぐらいあるのでしょうか。
- 角
- 今は60店舗以上あると思います。でき始めたのは僕が高校生の時で、当時はまだ10店舗もなかったと思います。実際、からあげだけで商売になるとなかなか思えなかったんだと思います。
- 油布
- 開店当時は厳しかったですか?
- 角
- 最初の10年は厳しかったですね。でももうそれから10年は経ったので、自分の息子たちが継いでくれるのであれば、そこにいい形でバトンを渡すためにどうしようかな、ということも今後の展望として考えています。継いでくれるかはわからないですけど、形を変えていきながらもこのからあげはこの場所に残していきたいなと思っています。イートインスペースも、「鳥しんに行けば美味しかった、楽しかった思い出があったなぁ」とか「自分の子どもも連れていってあげたいなぁ」と思い出してもらえる場所にできたらなという思いで作っています。からあげに限らずお客さんに求められるようなものが、ここで出せればなと思っています。
20年続くこだわりは「お客様を思う心」
- 油布
- 20年続くお店のこだわりはなんですか?
- 角
- お客さんに選んでもらうには、味の部分だけではないと思っています。あの店に行けば面白いことがあるとか、楽しい思い出ができると思ってもらえるように「商品に対して手を抜かない」ことや、「やったほうがいいと思うことを徹底してやる」などは意識していますね。「どうやったらまた来てもらえるものが提供できるか」というところをいつも考えて、こだわっています。ライバルが多すぎるのでね(笑)。
- 油布
- 60店舗ですもんね。各お店ごとに味も少しずつ違っているんですよね。
- 角
- そうですね。ほとんどのお店のからあげを食べていますが、全然違うと思います。うちが味でものすごく頑張ったところは「冷めても美味しいものを作る」ということと「何個でも食べられるものを作る」というところですね。
- 油布
- おっしゃるとおり、重くなくて美味しいです!特に「むね」のからあげはいくらでも食べられちゃうくらいです!
- 角
- そう言ってもらえると嬉しいです!美味しいものっていっぱい食べたいじゃないですか。だから、たくさん食べてもまた食べたいって思うものって何だろうっていうところで、味の方向性を決めていきました。特に最近は健康を意識する時代になってきていますし、自分が元々むね肉が好きだったので、「むね」のからあげに特に力を注いで、7、8年かけてこれが完成だなと思うレシピまで辿り着きました。揚げ時間も試行錯誤して、「もも」より40秒短くしたりとか。
- 油布
- 40秒でそんなに変わるんですか!?
- 角
- 変わりますね。油から上げた直後に胸肉を切って開けると3分の2以上は生なんですが、そこから4、5分余熱で火を通すんです。だからしっとりとしているんです。
- 油布
- 「むね」のからあげの概念が変わるくらいしっとりでびっくりです!
こだわりの「むね」からあげは驚くほどしっとりとしていて、ジューシー!
たくさん食べられるようにという角さんの言葉通り、しっかりと味を感じますが、あっさりとしていていくらでも食べられそうな美味しさです。とり皮は甘辛く味付けされていて、おつまみに最適!からあげと一緒にぜひ食べてみてください。
- 油布
- その他にはどんなメニューがあるのでしょうか?
- 角
- メインの骨無しの「もも」と「むね」の他、「手羽先」「ぶつ切り」「砂ずり」とか。最近は「肩トロ」とか「鶏トロ」とか呼ばれる、「もも」と「むね」の間の食感と旨味のあるパクパク食べられるサイズの部位をからあげにしています。お客さんが飽きることのないよう、色々と挑戦しています。
- 油布
- 今後の新商品も楽しみです!からあげの歴史やこだわりを教えていただきありがとうございました!
「鳥しん」が長く愛され続けている理由は、角さんのからあげが好きという思いから。好きという原動力があるからこそ美味しいからあげを提供し続けることができているのだと思いました。角さんの好きが詰まった「からあげの鳥しん」を訪れた際には、是非こだわりのからあげを食べてみてくださいね。
- からあげの鳥しん
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住所:〒871-0012 大分県中津市宮夫218-1
営業時間:11時00分~19時00分
定休日:火曜
WRITER
- 小島 直人記事一覧
竹田高校を卒業後、大分大学理工学部に進学し、大学院ではプラズマを専攻。高校、大学は実家から通える場所を選択するほど、大の竹田好き。父の影響で小学生の頃からカメラを始めている。大学院修了後はフリーのカメラマンとして竹田を拠点に企業の広告撮影、イベントやファミリー撮影、記念日の撮影などの活動を行なっている。
Airi’s impression
今日の取材はからあげのイメージが大きく変わりました!そして何より両店舗の店主の方がとても親切にからあげの歴史を教えてくださったり、取材も快くうけてくださって…そんな部分も数ある中津からあげ店の中でも人気店となる秘訣なんだと思いました! これからも中津からあげの魅力がより一層広まって、日本のB級グルメといえば”中津からあげ”となってほしいです♪