おおいたをたのしむ
2024年01月26日
大学生が夢を叶えた クロッフル専門店 “まほうのおうち”
別府市にあるクロッフル専門店「まほうのおうち」。
クロワッサンとワッフルを掛け合わせた韓国発祥のスイーツ“クロッフル”と、季節のフルーツをふんだんに盛り込んだパフェがSNSやクチコミで広がり、大分市内に姉妹店も誕生しました。そんな「まほうのおうち」の人気の秘密と、大学在学中に起業し、開業した若きオーナー・三浦さんにお話を伺いました!
人生を変えた商品開発
大分県日出町で生まれ育った三浦里芳さんは、昨年大学を卒業したばかりの23歳。
別府市にある「まほうのおうち」のオーナーでありながら、店内調理も含めた全ての業務を1人でこなしています。そんな三浦さんがこの道を目指すきっかけとなったのは、高校生の頃に取り組んだ地元企業との商品開発。その頃はまだ、将来の目標など何も決まっていなかったという三浦さんの人生を大きく動かす経験となったといいます。
「コーヒー豆が入った麻袋を再利用したペンケースを発案し、商品化が決定しました。この経験を通じて企画開発の楽しさや人と人の繋がりの大切さを実感しました」
どの進路に進むか悩んでいた三浦さんでしたが、先生の勧めもあり大学を受験。見事合格し、大分大学イノベーション学科へ進学しました。
「4年制の大学へ行くとは思ってもいなかったので、行くからにはみんなと違うことをしないと意味がないような気がしていました。海外に留学する友達もいましたが、個人的には“大学生活4年間が留学”くらいに捉えて、何か今しかできないことに挑戦しようと決めました」
コロナ禍だからこそできた挑戦が、起業へ
大学生活や環境にもようやく慣れてきた2年生の頃、学校や授業ではない何かにチャレンジしようと思っていた矢先に新型コロナが流行しました。何もできない毎日の中で三浦さんを襲ったのは“このままでは何もせずに終わってしまう”という危機感。コロナを言い訳にするのではなく、この環境を逆手にとって自分でできることをしようと決意した瞬間でした。
三浦さんは、大学の周辺に学生向けの飲食店やスーパーが少ない現状からキッチンカーでの販売を1ヶ月間限定で開始しました。
「喜んでもらえることが素直にうれしかったです。その時にクロッフルもお試しで販売して、多くの人に“おいしい”と言ってもらえたことで手応えを感じました」
流行の商品を、地方でも多くの人に届けたいという想いがあったという三浦さん。キッチンカーでの挑戦は、自分の中でも大きな達成感になったと笑顔をみせます。
その経験が三浦さんの背中を押したことや、今の店舗との出会いも重なり在学中に「まほうのおうち」をオープン。アルバイトで貯めたお金をやりくりしながらの起業には当然苦労もありながら、多くの人との出会いに支えられ開業できたと当時を振り返ります。
「最初は就活も考えていたので、お店と就活を並行する生活でした。大学の先生にも、こういうケースはあまり成功事例がないと(笑)。就職は後からでもできるとの後押しもいただき、両方が中途半端になっている現状を考え、お店の方に専念することに決めました」。
大学の授業の空き時間をお店経営に費やしながらの営業。大変なことも多い中、お店に来た人が笑顔で帰ることが何よりの喜びになったといいます。“何もしないで後悔するより、やって後悔したい”という彼女の強いポリシーが、多くの人に愛される小さなお店を誕生させました。
人と人をつなげる“シルタ”
そんな三浦さんがお店経営と同時に行っているのが、就職活動以外で学生と企業を繋げるイベントの実施等を行う「Silta(シルタ)」。自分自身の経験から、大学同士の交流や企業と学生を共に成長させるための場所と機会を提供しています。
「大分には小さくても福利厚生や人材に特化した良い企業が沢山ありますが、それが学生には届かず県外に就職する学生が多いのが現状です。いわゆる就活ではない、企業と学生の出会いを活性化したいと思いました」。
学歴や肩書きで判断されてしまうことの多い日本において、その人自身の良さや能力を見てもらえる世の中になってほしいと三浦さん。
社会人×学生の交流イベント「SIRANAI」の様子
「“みんな違ってみんないい”ではないですけど、誰もが好きな世界に一歩踏み出す勇気が持てるようにサポートをしたいと思っています。私自身も多くの人に助けてもらって今があるので、今度は自分が誰かを助けてあげられるようになれたら嬉しいですね」
ちなみに「シルタ」とは、フィンランド語で「架け橋」という意味を持ちます。お店に来てくれる人はもちろん、学生と企業、地域の人々など、三浦さんは多くの人と人を結ぶ架け橋となる活動を今後も続けていきます。
すべてはお客さまの笑顔のために
「まほうのおうち」はクロッフル専門店。当初は “魔法”という言葉のように、一つのものに捉われず様々な商品展開をできるお店にする予定でしたが、想像を超え評判となったクロッフルがSNSでお客さまを呼び専門店になったといいます。
「調理の経験もなかったので、すべて独学です。最初は動画を見たり、他県のスイーツを食べに行って勉強しました」。
本場である韓国にも視察のために足を運んだといいます。飲食の世界は甘くないと分かっていたそうですが、後悔をしないように生きたいという信念に突き動かされ、試作と改良を重ねた末、オリジナルのクロッフルを誕生させました。
どこか懐かしい雰囲気の店内では、自慢のクロッフルと季節のフルーツで作るパフェを食べることができます。カフェブームもありフルーツを使ったスイーツは少し値段のお高いお店も多い中、「まほうのおうち」はリーズナブル設定。そこには、何度も足を運んでもらいたいという三浦さんの想いがあります。
「美味しいお店は沢山あるけど、値段が高いと一度行けば満足という感じもあります。お客さまが何回も来て楽しんでもらえるように、値段設定はもちろん、新しいメニューもいつも考えています」。
お客さまの笑顔を見たいという三浦さんの願いが詰まった「まほうのおうち」。皆さんもぜひ一度訪れておいしいスイーツを堪能してみてください♪
- まほうのおうち
- ちいさな まほうのおうち
WRITER
- 塩月 なつみ記事一覧
かぼすポン酢をこよなく愛する生粋の大分女。美味しいものが大好きで、おなかがすくと途端に不機嫌になります。大分トリニータを中心に、企業や観光、飲食などオールジャンルで取材撮影中!