おおいたをたのしむ
2021年02月26日
天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト
みなさんは最近日田、天ヶ瀬へ行ったことがありますか?
豪雨災害が日田を襲ったのは2020年の7月のこと。あれから半年以上が経ちますが、山や川、道路や旅館など街はまだまだ復興していないのが現状です。今日は、日田市の温泉街・天ヶ瀬で復興に向け頑張るひとつの団体をご紹介!
「一番の支援は、被災地を知ること。」
被災地の現状を知り、今私たちにできることを一緒に考えてみませんか?
今日お話を伺ったのは、「天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト」代表の近藤真平さん。実は近藤さんは埼玉出身。サラリーマンをしながら日常を過ごしていた頃、自分と家族の暮らしを考えるようになったと言います。
「会社の統合や資本主義社会に直面していた頃、もう少し自分らしく生きられないかなと思うようになりました。そんな時、東日本大震災に遭って今の都会での暮らしが本当に豊かなのかなと考えましたね」。
お子さんが生まれるタイミングもあり、また奥様が日田出身だったことも重なり地域おこし協力隊として日田へ。協力隊期間の3年間は、温泉街の観光客誘致やPR活動、廃校の活用など色々な活動を経験しました。そして自分にできることを模索した結果、温泉街の中心部にカフェ・Fuchiを開店。その一年後、2020年の豪雨災害に見舞われました。
「災害でカフェの壁は倒れて、いい感じのオープンカフェみたいになりましたけどね(笑)。その時、住民の皆さんも元気を失っていたので自分のお店だけではなく、温泉街全体でできることを考えた方がいいと思いました」。
まだ降り止まない雨の中、すぐにそう考え始めたという近藤さん。それから数日、雨が止み温泉街の人々が商売敵の垣根を超えて、泥出しを手伝う姿を見た近藤さんは災害から1週間で「天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト」を立ち上げました。
「天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト」とは?
2020年7月壊滅的な豪雨で被害を受けた天ヶ瀬温泉街では、建物の浸水や配管の流失、土砂災害など数えきれない被害を受けました。また、街のシンボルマークとも言える赤い吊り橋も崩壊し、多くの方に親しまれていた天ヶ瀬の景色が一変。そんな状況を少しでも復興していきたいと、温泉街と協力隊のメンバーで立ち上げたのが「天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト」。“希望が作る未来”を目指した有志チームです。
プロジェクトとして最初はどんな活動を?
「まずここは観光地なので被災したイメージを払拭したいと思いました。また、ボランティアの方々も来てくれるので天ヶ瀬のファン、ファン候補づくり、人との繋がりを増やすこと。そして、マイナスイメージを緩和するために出来るだけメディアに出ました。そうしているとボランティアの人も多く来てくださいましたし、2020年に豪雨で被災した長野県の方からリンゴが届いたり。そういう人と人との繋がりを大切にしたいと強く感じました」。
更にはクラウドファンディングで資金を集め、観光協会の方々と支援グッズを企画。一度きりの寄付にならないように、手を差し伸べてくださった方々と末長く繋がるようにと、画家の牧野伊三夫さんが天ヶ瀬をイメージして描いたTシャツや、天ヶ瀬の温泉を楽しめる回数券「楽しみをお取り置き 温泉極楽パスポート」などを作り、天ヶ瀬復興への想いを込めました。
その支援金をもとに、炊き出しや防犯用のセンサーライト、街灯が流された箇所にはLEDを入れた竹灯籠を配置。街全体で防犯意識を高めました。
「色々な活動をしていましたが、工事もなかなか始まらず目に見える復興が行われなかったので、住民が集える場所として、“天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト”の名前を約した “あまみらカフェ”を作りました」。
思うように進まない現状の中、住民のみんなが心くつろげるカフェは今も天ヶ瀬の癒しの場所です。
現在はどのような活動を?
「今は惣菜の移動販売「あまみら惣菜」と「あまみらカフェ」がメインです。あとは温泉街全体のコンセプトメイクをしています。別府は湯の町とか、そういうキャッチーなものが今まで天ヶ瀬にはなかったので、今回を機会に作っていこうとしています。今まで、温泉地全体で人を呼ぼうという意識が低かったのかなと思いますが、それは県外から来た僕だからこそ気付けたことかもしれませんね」。
地元の人には当たり前になっていた天ヶ瀬の魅力。それに着目し再びたくさんの人が天ヶ瀬に来てくれるよう、近藤さんは日々発信し続けています。
これからの活動や展望は?
「コンセプトが固まったら、それを体感できるようなものにしたいと考えています。例えば、川がある暮らしの豊かさは天ヶ瀬の大きな魅力だと思うので、それをどうすれば体感できるか。例えばベンチの設営や写真スポットの提案、旅館の中でも川の良さを体感できる場所など、天ヶ瀬の魅力を少しでも伝えていけたらと思います」。
自然に溢れ、川の流れを感じる街の魅力に着目し、もっとこの街に付加価値を付けていきたいという近藤さん。共に頑張る仲間たちと前だけを見て進んでいます。
近藤さんからのメッセージ
「震災の復興は本当に難しいことばかりです。一歩進んで三歩下がるといった感じですが、熊本地震で被災した方から『色々と上手く行かないことは多いけど、全部が復興への過程ですよ』と掛けられた言葉に、すべてが凝縮されていると思います。自分自身、埼玉からここへ来るのは人生の大きなチャレンジでしたが、天ヶ瀬の人たちが温かく受け入れてくれて、応援してくれて。でもそんな人たちが今、とても苦しんでいるので僕にできることがあればやりたいですし、一緒に頑張ろうという想いが僕を動かす原動力になっています。一番簡単な支援は、被災地を知ることだと思います。ぜひ天ヶ瀬に来てみてほしいと思います。足を運んで知るだけでも大きな支援になりますし、天ヶ瀬に来てくれた皆さんはみんな「仲間」だと思っています。これからも、そんな仲間をもっと増やしていきたいですね」。
「全国的にも被災した温泉街は前例がないので、良い事例になると思います。僕たちの活動を通じて、たくさんの人に勇気や希望を与えられると嬉しいですね」。
その言葉が出るまでに、どれだけの苦悩や頑張りがあったのだろうと感じました。この記事を書いている私も、読んでくださっている皆さんももう天ヶ瀬の仲間です!ぜひ一度、天ヶ瀬へ足を運んでみてください。笑顔のステキな仲間たちが迎えてくれるはずですよ。
- 天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト
WRITER
- 塩月 なつみ記事一覧
かぼすポン酢をこよなく愛する生粋の大分女。美味しいものが大好きで、おなかがすくと途端に不機嫌になります。大分トリニータを中心に、企業や観光、飲食などオールジャンルで取材撮影中!