おおいたをたのしむ
2023年10月27日
佐伯市宇目の栗を味わう期間限定スイーツ
「唄げんか焼」
皆さんはご存じでしょうか。秋から冬にかけて運が良ければゲットできるという、佐伯市宇目産の希少な栗を使ったスイーツがあることを……。佐伯市の「道の駅宇目」の店頭に並ぶと土日は瞬く間に売り切れ、百貨店の催事に出店すれば長蛇の列ができる、まさに幻ともいえるスイーツ、その名も「唄げんか焼」。どうしても食べてみたい!ということで、唄げんか焼がつくられている佐伯市宇目へと車を走らせました。
佐伯市宇目地域の産品を使ったスイーツ
大分市街地から国道326号を南下し、車で約1時間10分。宮崎県との県境近くの山間、佐伯市宇目地域にある「栗の実工房」で唄げんか焼はつくられています。
今回お話を伺ったのは、栗の実工房の
約20年前、小野さんのご両親が白餡と黒餡の回転焼きをつくり、販売をスタートしました。宇目地域に受け継がれている民謡「宇目の唄げんか」から由来するオリジナルのネーミングで販売をするようになったのが唄げんか焼のはじまりで、そののちに、宇目の産品である栗を使った餡で唄げんか焼をつくるようになったんだとか。小野さんは2年ほど前にご両親から唄げんか焼の製造を引き継ぎました。
栗の実工房 小野 亮さん
唄げんか焼の特徴は、手づくり、無添加であることと、なんといっても宇目地域で取れた栗の餡をたっぷりと使っていること。佐伯市宇目地域は標高が高く寒暖差があるため、大粒でしかも味の濃い栗が育つ、大分県でも有数の栗の産地。近年では気候の変化や地域の高齢・過疎化の影響もあって栗の生産量は年々減少し、今では貴重な産品となりつつあります。
地域の力で丁寧につくられる栗餡
実際に栗餡をつくっている作業場を見せていただきました。取材をしたのはちょうど栗の収穫時期。9月から10月中旬にかけて、唄げんか焼になくてはならない、今年の分の栗餡を仕込む作業の真っただ中でした。
まずは大量の栗をゆで、そして固い皮から手作業で実を取り出します。外側の鬼皮と内側の渋皮は手作業でなければ取れないため、ここが特に一番手間暇のかかる骨の折れる工程なのです。その作業を担当するのは宇目地域のご近所の皆さん。毎年サポートしているベテランの方ばかりなのだそう。
その中には唄げんか焼の生みの親である小野さんのお母さんもまだまだ現役で作業をしていました。
「栗ほど加工が大変な実はないですよね。ですが、この作業をこなしてこそ、おいしくてオリジナリティーのある栗餡ができていると思います」と小野さんは語ります。
皮からくり出した栗の実を細かく刻み、砂糖と一緒に火にかけ、練って餡にしていきます。保存料は一切使用しません。栗そのものの味と食感を楽しめるように、栗の実を大小のランダムなサイズにカットしているところがポイントとのこと。栗の実が粉々にならないように刻むのは至難の業で、この技術は長年の経験のたまものなのだそう。
栗餡は鍋で長い時間をかけてじっくりと煮込んでいきます。餡が焦げないように小野さんがずっと鍋の番をしながら混ぜ続け、ちょうどいいタイミングを見極めて仕上げて完成です。
その年に収穫した約3トン以上の栗を使用し、1日に100キロほどの栗餡を練っているそう。
「栗特有のパサパサとした食感をしっとりとした餡にするために、両親が何度も試作を重ねて現在の味にたどり着きました。長年試行錯誤して生まれたこの味を、ぶれることなくつくり続けることが、唄げんか焼を継承した私の使命です」と小野さん。
こうしてその年に収穫した栗を使った餡が、今年の分の期間限定の唄げんか焼となって販売されます。
栗が丸ごと詰まった秋の味覚をいただきます!
いつか食べてみたいと思いながら、本当に手に入らない(その年に気づいたときは完売している)唄げんか焼をついにいただきます……!嬉しすぎて食べる前から思わず笑顔になっちゃいました♪
民謡の「宇目の唄げんか」をイメージした焼き印がしっかり押された、できたての唄げんか焼。
見てください!栗がこんなにもギッシリ、たっぷり!
ふかふかの生地の唄げんか焼をほおばった瞬間、栗の香りがふんわりと漂い、まるで栗の渋皮煮が餡になったような味が口いっぱいに広がっていきます!ゴロゴロとした栗の実が食べ応えもあって、その一口で一気に秋の訪れを感じさせてくれます。栗の皮をむいたことがある人はお分かりかと思いますが、あの労力を考えると……。思わず「栗をむいてくださった皆さん、ありがとうございます!」と心の中でお礼を言わずにはいられませんでした。
栗そのものの程よい甘みと和風の味わいとが相まって、緑茶にもコーヒーのお供にもぴったり。ボリュームもあるので満足度の高いスイーツです♥これはたまりません!
お客さまの笑顔が作り手のやりがいに
機械ではなく人の手で、一つ一つ丁寧な作業がなくては唄げんか焼の栗餡をつくることはできません。
「遠方からはるばる宇目まで訪れ、買い求めてくださるお客さまや、毎年楽しみにしてくれている地元の方たちがたくさんいるからこそ、今年もおいしい唄げんか焼をつくろうという気持ちになります」と小野さん。
「お客さまの笑顔のためはもちろんですが、スタッフとして毎年栗餡をつくってくれる宇目地域の高齢の方が、この作業がやりがいになっていると言ってくださっていて。皆さんの力がなければ、唄げんか焼をつくることもできません。たくさんの人たちの思いに応えるとともに、宇目らしい味があることをもっと多くの方に知っていただけるように、唄げんか焼を大切につくって、お客さまに届けることができたら嬉しいです」。
愛情を込めてつくられる唄げんか焼は、食べると心がなんだかホッとする、温かい気持ちにさせてくれる、それこそがたくさんのファンの心をつかんで離さない秘訣に違いありません。
気候の影響で今年は栗の収穫量が例年に比べて少ないそうなので、「食べてみたい!」と思った方は早めに道の駅宇目へ(特に平日のほうが買える確率が高そうですよ)。実演販売をする日もあるとのこと。また栗のシーズン以外も、黒餡・白餡・カスタード味がありますので、ドライブがてら佐伯市宇目までのんびりとお出かけしてみてはいかがでしょうか。 道の駅宇目以外では、県内のイベント会場での販売もありますので、ぜひインスタグラムでチェックしてみてくださいね♪
- 栗の実工房
WRITER
- 牧 亜希子記事一覧
planner/writer。特に大分県の観光情報が得意な自称「勝手に大分県の魅力案内人」。友人からのリクエストで旅行プランを立て、アテンドすることも。 特技/取材や撮影に行くことが多いにもかかわらず、「超」が付くほどの雨女。私の行き先ではかなりの確率で降らせます。取材先の皆様、ご了承くださいませ。