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2025年02月28日
中田英寿さんと大分を旅する
-「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン“NIHONMONO”
日本のサッカー界のみならず世界で活躍し、現在は株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANYを設立し、日本酒に関する様々な事業を展開している中田英寿さんが「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン「NIHONMONO」。今回は、中田さんが大分県の旅で出会った“器”たちをご紹介します!
唯一無二の作品を作り続ける 陶芸家・三笘修さん
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真夏の暑い日に訪ねたのは、日田市に暮らす陶芸家・
日田市出身の三笘さん。18歳までを地元で過ごし、東京学芸大学在学時に焼き物の魅力にのめり込んでいくようになったといいます。様々な経験を重ね2007年に地元・日田に築窯。「型作り」という手法を用いて、ろくろは使わず型による成形や、手びねりだけで器をつくっています。現地に到着して驚いたのはその工房。その大きさは、わずか5坪! しかしながら、その空間の中にはシンプルな中にも趣深い“三笘ワールド”が広がっていました。中田さんはその工房の中で三笘さんと1対1で、器に関する色んな話をしていました。
時間を惜しまず“ゆらぎ”を表現する
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イメージをスケッチしデザインすることに始まる三笘さんの器づくり。描いたものが立体的になるよう、見比べながら粘土を成形し原型をつくり、石膏で型取り。その型を張り合わせ、ひとつひとつ指で押さえてなめらかにしていきます。すべてが手作業なため時間は要しますが、それでもこの技法にこだわるのは、型作り独特の「ゆらぎ」を表現するため。
「ろくろ挽きでも勿論ゆらぎは出来るのですが、型作りの工程の中で生まれる、ゆったりとしたリズムや指の圧力、そして手掛ける時間が、唯一無二の個性に繋がっているんですよ」。
三笘さんが手掛ける器の魅力となる柔らかな揺らぎ、美しい歪みはすべてを手でつくることで生まれています。
こだわらない、こだわり
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「毎回思い通りにいかず、コントロールできないのが陶芸の楽しさのひとつ。1から100まで人間の思い通りにつくったものは、あまり面白くないかな」と三笘さん。
陶芸を始めた当初は、自分のデザイン通りにつくりたいという思いがありながらも、月日を重ねていくうちに思い通りにいかないことも魅力だと感じるようになったといいます。また、器は使う人によって育つものだと考え「焼物はこうあるべき」というルールは持たないものの、唯一こだわるのは釉薬。陶磁器の表面を覆う釉薬は焼成することで様々な表情を生むため、三笘さんは地元の天然原料を使って
人々の生活に寄り添い、愛され続ける器を作り続ける
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三笘さんはすべての工程を1人で行っているため生産量が少なく、「手に入らない作家」として知られています。手間ひまをかけ完成される作品は、色や濃淡、釉薬からなる表情、焼いた後のゆがみやゆらぎ、そのすべてが唯一無二の存在。他と一線を画す独特のオーラを放ち、無駄なものを省いた繊細なエッジなど、シンプルな中に個性を求める人に愛されています。
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自分で作って美しいと思うものを見た瞬間、日常で仕事に集中できているとき、想像していないものが出来上がったとき。そんな日常のワンシーンが喜びであり、最大の癒しになると三笘さん。
「淡々と過ごす日々の中で、美しいものや偶然できた産物に出会い、充足の繰り返し。そこに、作家の主張はいらないのかな」。
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作り手の想いだけではなく、ただ、使う人や見る人の想いを反映できるようなものを作りたい。そう言いながら、三笘さんは今日も5坪の工房で、人々の生活に寄り添い愛される作品をつくり続け、日々の暮らしの中で生まれる「美しいもの」や「魅力的なもの」を追求、表現し続けています。
NIHONMONO:「器は、使う人により育つもの」唯一無二の作品をつくり続ける 陶芸家 三笘修さん/大分県日田市
- 陶芸家 三笘 修
臼杵から世界へ_幻の焼き物を今に伝える「USUKIYAKI研究所」
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中田さんが旅の最後に訪れたのは、大分県臼杵市に拠点を構える「USUKIYAKI研究所」。ここでつくられる「
臼杵の文化と幻の窯業文化との出会い
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大分県臼杵市は豊かな自然環境や、二王座歴史の道に代表される城下町など様々な歴史や文化が残る町。中でも、海のもの、山のものがある「食の町」としても広く知られています。また、江戸時代に起きた天保の改革の発令により生まれた「質素倹約」の精神が育まれる中、知恵を絞って生まれた郷土料理など多様な食文化が発展し存続していることから、2021年ユネスコ創造都市ネットワーク食文化部門に加盟認定されました。
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そんな歴史ある臼杵で今から約200年前の江戸時代後期に、臼杵藩の御用窯として島原(長崎)小石原(福岡)小峰(宮崎)の陶工たちが迎えられ陶器と磁器がつくられました。しかし、窯が開かれ十数年ほど栄えたのち衰退したとされています。その幻の窯業文化に着目したのが宇佐美さん。臼杵市出身の宇佐美さんは美大時代に焼き物に出会い、専攻していたアートと焼き物を融合し手掛けたいという想いが芽生えたといいます。卒業後は臼杵に戻り、実家が営む郷土料理レストランを継ぎ、料理の器を扱う中で今は途絶えている焼き物が地元にあることを知り「自分がもつ焼き物の技術とうまく結びつけて、臼杵独自のブランドを一歩でも前進させたい」と考えるように。臼杵の焼物文化を自分たちでリニューアルし、一から作り上げたいという気持ちと、途絶えてしまった臼杵の窯業文化を復興したいという想いから、仲間とともに2015年「USUKIYAKI研究所」を立ち上げました。
地域への想い、手のぬくもりを器にのせて
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わずか十数年で途絶えた臼杵の焼き物は、当時の窯場が末広善法寺地区(通称・皿山)にあったことから地元では「末広焼」または「皿山焼」と呼ばれていたといいます。宇佐美さんが最初に出会った「末広(皿山)焼」は、アイスクリームを入れたらちょうどいいくらいの小鉢。菊の形をした白磁の
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「臼杵焼」のモチーフとなるのは、臼杵の町にある豊かな自然。陰翳が美しいマットな白と、菊や
臼杵焼を通じて伝えたい想い、臼杵への愛
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「うつわは料理を盛ってこそ生き生きするもの。うつわは料理の額縁」という研究所の信念。器は人の生活の中から生まれ、生活の中で使われるもの。「臼杵焼」は白く美しいだけでなく、どんな生活にも溶け込む素直さや使いやすさなど多面的な魅力を備えていると宇佐美さん。「臼杵焼」を通して一番伝えたいのは、臼杵という町に興味を持ち、臼杵という土地に足を運んでもらいたいことだと言葉を重ねました。
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2020年以降コロナ禍の間、臼杵を訪れる人が減った一方で、器のネット注文は増加。ちょうど海外展開を考えていたタイミングでもあった一方で、地元に来てもらい、実際に器に触れてもらいながら販売したいという本来の想いが果たせなかったといいます。その経験から食と器の体験空間「うすき皿山」を完成させました。ここは「臼杵焼」の展示販売をするギャラリーや、型打ちや金継ぎの体験や製造の見学ができるアトリエのほか、喫茶室や焼き菓子工房で構成されており「つくる・みる・ふれる」がすべて体験できる場所。カフェスペース・皿山喫茶室では、宇佐美さんの奥様であり料理人の宇佐美友香さんが手掛ける、スイーツや中国茶を味わうこともできます。年間を通じて、器や季節の食事を楽しめる様々なイベントも開催され、お客さまとの新たなコミュニケーションの場として温かな時間が流れています。
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どんな時も宇佐美さんの胸にあるのは「臼杵という小さな町を全国に、そして世界へ発信したい」という想い。それは「臼杵焼」を手掛けるにあたり、世界中に暮らす大分、臼杵出身の方たちからエールをもらったことが活動の原点であり、その人たちへ恩返しをしたいという想いからなるといいます。
臼杵を愛し、臼杵と共に歩む人々の想いをのせた「臼杵焼」は、これからも世界とつながってゆくことでしょう。
NIHONMONO:臼杵(うすき)の町から世界へ。幻の焼き物を今に伝える「USUKIYAKI研究所」/大分県臼杵市
- USUKIYAKI研究所
- うすき皿山
WRITER
- 塩月 なつみ記事一覧
かぼすポン酢をこよなく愛する生粋の大分女。美味しいものが大好きで、おなかがすくと途端に不機嫌になります。大分トリニータを中心に、企業や観光、飲食などオールジャンルで取材撮影中!
NIHONMONOとは?
中田さんが日本中を巡り、旅で出会ったうまいもの、美しい場所、手に馴染む道具、人の暖かさなど、その土地に行ったからこそ見つけられる「にほん」の「ほんもの」に出会う旅の記録。自らが日本の魅力を発信し、日本文化の素晴らしさを少しでも多くの人に知ってもらうきっかけを作りたいという想いが込められたサイトです。
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