おおいたをたのしむ
2018年03月30日
想いを紙にのせて_「ilocami」の奏でる世界。
最近、大分で活躍するアーティストたちの話をよく耳にするようになりました。インターネットやSNSの発達によって、たくさんの情報を得る中で、私たち大分県民は自然と「大分」の文字に目が行くものデス。今回は、別府市で紙を使ったアクセサリーを製作し、その才能を全国へ発信している2人のクリエイターをクローズアップ。60年以上続く老舗紙器メーカーの加工技術と、新たな発想とデザインを取り入れた、デザインプロジェクト「ilocami(イロカミ)」とは?
お話を聞いたのは、別府市にある老舗紙器メーカー「株式会社樋口紙器工業所」でデザイン、企画などを手がける樋口太希さんと、同じく別府市在住のデザイナー・児玉春佳さん。おふたりは2016年の夏、デザインプロジェクト「ilocami」をスタートさせました。包材などに使用する紙を使ったアクセサリーの企画から製造まで、すべての工程をふたりで行なっています。
アクセサリーが「紙」…??
あまり結び付かないというのがホントの所ですが、果たしてそのアクセサリーたち、一体どのようにして生まれたのでしょうか。
(左から樋口さん、児玉さん)
ilocamiがスタートするまで
別府市出身の樋口さんは高校を卒業すると、東京の服飾専門学校へ進学。
その後は東京のアパレルメーカーに入社。Webでの商品管理などを担当し、10年経った頃。実家・樋口紙器の代表を務める父親の長期入院の知らせが。
「長男でもありますし、いつかは地元へ帰るのだろうという思いはありました。そしてちょうどその時期は、この先の人生を考えるようにもなっていました。具体的な目標を模索していた頃でしたね」。
東京での刺激的な生活に区切りを付け、地元で自分がどのように生きていくのか…。様々な思いが交錯していた樋口さんでしたが、実家の会社を思い帰郷を決意。その後、社内で「COPACO」というブランドを設立。外部のデザイナーさんと手を組み、紙を使った雑貨などを展開していきました。
この「COPACO」の手がけた時計に魅せられたのが、現在デザイナーを務める児玉さん。児玉さんは、熊本の大学を卒業後、地元・大分の建築会社へ入社。しかし、ものづくりが好きな児玉さんにとって会社での取り組みは決まりごとが多く、少し物足りない部分もあったと当時を振り返ります。
「もっと、自分の自由な発想を伝える場所が欲しいなと感じていました。いずれは独立も視野に入れていたので、退社後は1年間カナダのトロントやアメリカに単身留学しました」。
海外で多くの建築物を見て回り、その背景に触れながら沢山の刺激を受けました。そして帰国後、樋口さんと「COPACO」に出会ったことがすべての始まりとなるのです。
ある時計との出会い、そしてスタート
「その時計を見て、紙でこんなことが出来るんだと驚かされましたね。紙には色数も、風合いの違いも無数にあって。今は印刷の技術も発達しているので、そこに紙の可能性を感じました」。
ちょうどその頃、知人から販売用のアクセサリーを作って欲しいとの依頼が舞い込み、試作に明け暮れていた児玉さん。
「初めは木やガラスで試作していたのですが、どこかありふれた感じがしていて何か差別化できる素材を探していました。そこで紙の時計に出会って、どこか運命的なものを感じましたね(笑)」時計との出会い、アクセサリーの依頼などすべてが同じ時期に集まり、それが「ilocami」のスタートとなったのです。
展示会からの広がり
2016年夏から知人の美容室での販売、そしてウェブストアを開設。知人たちのSNSから「ilocami」の名前は大きく広がり、開設当初から大きな反響があったと言います。現在は定期的に展示会にも出店しながら、全国展開で販路を広げています。「展示会場では、有難いことに多くの方から反響を頂いています。やはり紙のアクセサリーというのは全国的に見ても珍しいので、バイヤーさんの目に止まりやすいのかもしれませんね」。
順調な滑り出しのように見えるilocamiですが、初めは大きな展示会へ出店する為、クラウドファンディングで資金を募ったことも。「ネットなどで知ってはいましたが、そう簡単に集まるものではないと思っていました(笑)でも目標金額を達成できて、本当に嬉しかったですね」と樋口さん。SNSなどネット上で広がったクラウドファンディング活動を成功させ、協力を頂いた方にはilocamiの商品を送り、感謝の意を伝えました。
展示会をきっかけに、今では小倉井筒屋、博多阪急、大阪梅田阪急など県外の百貨店でのポップアップショップなどにも呼ばれるように。また全国15店舗のお店で販売もしています。(大分県では、MAISON DE PITICA(美容室)、SELECT BEPPU、STOCKPILE ecorioで購入できます!)
これからのilocamiについて
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- デザインの数々は、どのようにして生まれていますか?
- 児玉さん:
- 「デザインはふたりの好きなものを話し合いながら考えています。私は幾何学模様が好きなので、それを取り入れたりしていますね」。
- 樋口さん:
- 「ヒントはどこに行っても無数に転がっています。展示会などで、他のデザイナーさんの作品を見ても、自分たちに足りないものが沢山あると感じます。もっと自分たちのオリジナリティを出していきたいですね」。
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- 今後の展開は?
- 児玉さん:
- 「少しでも多くの場所でお取り扱いして頂けるようになりたいです。これからはもっとターゲットを明確にして、そこに向けて作っていきたいと思っています」。
- 樋口さん:
- 「もちろん、ilocamiというブランドを確立させて全国にももっと販路を持っていきたいという思いは設立当初より変わりません。一方で、多くの会社やデザイナーさんと一緒に取り組ませて頂いていることにも、やりがいを感じています。自分たちと同じように、ものづくりをされている方と一緒に向上できたらいいなと思っています」。
アクセサリーの他にもパッケージなどの依頼も受けている「ilocami」。様々な会社との交流も多い中でデザインをするだけでなく、デザインを通じて、もっと商品の根底から提案できることがあるのではないか考えています。
オオイタから全国へ
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- 活動の原動力となるものは?
- 児玉さん:
- 「私たちの作る作品は、大分や別府が好きだからこそ生まれるものだと思っています。やっぱり好きという気持ちがなければ、新しい発想や企画は生まれてこないので、そこは私たちの基本になっていると思います」。
- 樋口さん:
- 「別府市とビームスが協業したプロジェクト「BEAMS EYE on BEPPU」にも参加させて頂きましたが、別府にも僕たちと同じように、新たな商品を開発したいという熱意を持った方が沢山いることを知りました。その商品も素晴らしいものばかりなので、もっと色んな活動を通して大分を全国にアピールできたらと思っています!」
大分からたくさんのことを発信している2人。これからも、もっと大分や別府などの地域発信をしていきたいと言います。そして、その発想はアクセサリーだけに留まりません。「例えば皆さんがテーマパークでキャラクターの耳を付けるように、別府に来たら身に付けたくなる様な(笑)商品も作りたいなと。別府を盛り上げるという意味でも、別府の象徴になれる様な浴衣やユニフォームを作れたら最高ですね」。
地元を想う気持ちをカタチにし、全国へ発信している「ilocami」。
すべての工程を一から自分たちだけで行う背景には、地元を想う愛と、まっすぐな熱意がありました。樋口さんが樋口紙器で培ったパッケージのノウハウと、児玉さんの新たな発想とデザインを取り入れ生まれるアクセサリーの数々。これからも大分を代表するブランドとして、大きく羽ばたいていくことでしょう。
今後の「ilocami」の活動に乞うご期待デス♡
- ilocami
- プロフィール
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樋口 太希 (ひぐち たいき)
1985 年生まれ。文化服装学院卒業後、アパレル会社勤務。2014 年 (株)樋口紙器工業所入社。 2016 年 ilocami をスタート。
児玉 春佳(こだま はるか)
1989 年生まれ。熊本大学建築科卒業後、設計業務を経て2014 年 海外留学。2016 年 ilocami をスタート。
WRITER
- 塩月 なつみ記事一覧
かぼすポン酢をこよなく愛する生粋の大分女。美味しいものが大好きで、おなかがすくと途端に不機嫌になります。大分トリニータを中心に、企業や観光、飲食などオールジャンルで取材撮影中!