おおいたをたのしむ
2024年12月06日
ルワンダでの“コーヒー隊員”を経て起業!挽き売りコーヒー専門店
「Create Coffee Lab」
最近、大分のあちこちで見かけるようになったおしゃれなコーヒー店の数々。そんな中から今回見つけたのは、大分市花高松の住宅街にある挽き売りコーヒー専門店の「Create Coffee Lab」。いわゆるカフェではなく、“挽き売り”に特化したお店なのが気になるところです。
道沿いから豆の種類を書いたプレートが見えてくるCreate Coffee Labは、焙煎したスペシャルティコーヒーの豆を対面販売するコーヒースタンド。リノベーションした元民家の玄関が販売スペースになっていて、カウンター越しにマンツーマンでコーヒーを選べるスタイルに興味津々。もちろん、豆の購入だけでなく一杯からテイクアウトもできます。
今回お会いしたのは、オーナーの
「ぜひ入れたてのコーヒーを飲んでください! それからゆっくりお話しましょう」。
まずはコーヒーをいただくことに。
Create Coffee Lab 椎原 渉さん
実力派焙煎士のいるコーヒースタンド
Create Coffee Labのこだわりは、一杯一杯丁寧にハンドドリップで入れること。コーヒー豆の量、お湯を注ぐ時間を測り、ゆっくりと円を描きながらお湯を注ぐ所作が美しい椎原さんの手元に見惚れてしまいました。コーヒーの豊かな香りに包まれ、ポコポコと音を立てながらコーヒーが落ちるのを眺めるのも至福のひとときです。
店頭には鮮度の高い焼きたてのコーヒー豆が並びます。期間限定の商品と、毎日飲んでもらえるような定番のものをベースにセレクト。ブレンド、シングルとあわせて約10種類を常備し、豆以外にも手軽に飲めるドリップパックや、洋菓子店とコラボしたオリジナルの焼き菓子など、コーヒーとあわせておすすめしたいアイテムも取り揃えています。
ふと目に入った、店内に飾られたコーヒーポットの形をした木製の盾。これは、コーヒーの抽出技術を競う大会「コーヒーブルーイングトーナメントジャパン2023」で椎原さんが日本一に輝いた証!
他にもたくさんの賞状が飾られています。国際的なコーヒー鑑定士「Licensed Q Arabica Grader(Qアラビカグレーダー)」の資格保有者は世界に400人、そのうち日本には30人ほどしかいないとか! 椎原さん、タダものではない予感がします……。
世界を見てたどり着いたのは、コーヒーのある人生
椎原さんは大分市出身。高校は野球の名門、大分商業高等学校に進学(埼玉西武ライオンズの源田壮亮選手と同級生!)。野球漬けの学生時代を過ごしたそう。部活を引退後、そろそろ進路を考えなければ……と思っていた高校3年生の夏休み、人生の分岐点となる出来事がありました。事業を営む父親の出張について行った中国福建省での物産展示会で見た活気ある景色が忘れられず、中国への語学留学を決意。最初は1年ほどの予定だったそうですが、勉強するにつれて学位を取りたいという意欲が増し、中国語検定に合格ののち、
椎原さんがコーヒーとつながるのは大学を卒業して大分に戻ってからのこと。中国で培った知識と語学力を生かし、自分に何ができるのかを考え、別府市にあるコーヒー関連の商品を扱う株式会社三洋産業に営業職で入社。「“ハンドドリップってなに?”というところから始まり、毎日ハンドドリップの練習を繰り返す日々だったんですよ(笑)」と椎原さん。中国語を武器に海外への展示会へ社長に同行し、大分市との姉妹都市でもある武漢での大分物産展で商談も経験しました。
まさかの転身!会社員から“コーヒー隊員”へ
さまざまな業務にふれるうちに、いつしか焙煎に惹かれ、生豆の生産地に行ってみたいと思うようになった椎原さん。ある日、たまたまネット検索をしていたときに、JICAの海外協力隊の“コーヒー隊員”の方が書いたブログが目に飛び込んできました。
「コーヒーを学ぶために自分の力だけではここまではできない、JICAの活動を通じて叶うなら、今やらないと後悔する」と、居ても立っても居られない衝動にかられた椎原さんは、社長に退職を直談判し、海外協力隊に応募。JICAの審査も見事合格し、2019年にコーヒー隊員として2年間アフリカのルワンダ共和国へ渡ることになりました。
ルワンダではコーヒーの栽培支援の活動に取り組んだそう。初めて目にするルワンダのコーヒー栽培の現実を体感し、文化や歴史の違いから感じたもどかしさや、自分がやりたいことのためには自ら動くことの大切さなど、現地に行ったからこそ知り得たことに、多くのことを考えさせられたそう。
赴任期間は新型コロナウイルス感染症が広まった時期と重なり、1年3カ月で帰国し、引き続き日本で活動を続けました。任期後は、JICAの活動やこれまでに得たコーヒーの知識と情報をお客さんに伝えられるコーヒー店を始めようと起業に踏み出しました。焙煎したコーヒー豆の対面販売をするお店を2022年に花高松でオープン。店のロゴマークのデザインは、ルワンダの伝統工芸アート“イミゴンゴ”をモチーフにして、海外協力隊での経験を事業に取り入れていくという決意の表れにもなっているそう。
起業後はコーヒーの資格試験や数々の大会などにもチャレンジ。
「競技会に挑戦したらたまたま優勝できて。行動力には自信がありますが、運も味方してくれているし、たくさんの縁にも恵まれているんですよね。仲間たちの力もあって、店も少しずつ認知してもらえるようになってきました」。
超地域密着型のコーヒー店に
スーパーのとなりにあるCreate Coffee Labは、朝早くからご近所のお客さまがひっきりなしに訪れ、豆を買っていく人の多さに驚かされます。
「髪の色が変わりましたね!」「今日はコーヒーを4つ届けたらよかったですかね?」「スーパーでいい買い物ができました?」と、お客さまに笑顔で声を掛ける椎原さん。常連さんからお米や野菜などの差し入れをもらうこともしばしばあるそうで、この日はゆでもちを差し入れるお客さんがいました(笑)。フラッと立ち寄って、ちょっと一杯飲みながらここで立ち話をするのが楽しみな“椎原さん推し”も多いとお見受けしました。なんだかほっとする雰囲気が、近所の方たちにとって温かいひだまりのような存在になっているのでしょう。
どうしたら自宅でもコーヒーをおいしく入れられるのか、ここに来れば椎原さんが目の前でおしえてくれるのはありがたい!
「お菓子づくりと一緒で、一番大事なのは“計量”すること。コーヒーと、注ぐお湯の量、注ぎ終える時間を量ればちゃんとおいしくなります。基本がわかれば、そこから自分好みに調整できるようになりますよ。ゆっくり入れればバランスが良いコーヒーになるし、勢いよく入れればフレーバーと個性が出やすくなる。自分がどんなコーヒーが好きなのか、おいしさの感覚は人それぞれ。コーヒーは自由ですから」。
自宅でいただくのもおすすめですが、非日常を味わいながらゆっくりおいしいコーヒーを飲みたいわ♥という方、Create Coffee Labは中島にカフェもありますよ!
シフォンケーキやブラウニー、トーストなど、コーヒーにぴったりなスイーツや軽食を食べることができます。珍しいメニューでは、竹炭アイスクレープも必見です!
コーヒーの奥深さは焙煎にあり
Create Coffee Labの3つ目の拠点として近々オープン予定の、大分市海原にある焙煎所にも案内していただきました。
中南米、アフリカ、アジアから仕入れたいろんな国のコーヒー袋には生豆がぎっしり。バーナーや窯をカスタムした重厚感ある焙煎機は貫禄があります。
「焙煎は簡単に言うと、短時間で高カロリーな焙煎の仕方と、ゆっくりと長めに火を入れていく、2種類のやり方があります。同じ豆でも味わいがまったく変わりますね」。
椎原さんが研究に研究を重ね、いかにお客さまに喜んでもらうかという熱意もビリビリと伝わってきます。
「豆本来の味と、焙煎したからこそ出せる味とを区別して、嗅覚と味覚のセンサーと知識で一つの味わいをつくっていくことが私たちの大切な仕事。あともう一つ大切なのはチーム力ですね。社員みんなの意見を取り入れてチームとしてやってきたので、私ひとりでは絶対にできませんでした」。
Create Coffee Labのコーヒーは、5名のスタッフで支え合って創られています。
大分初!?シェアローストサービス
コーヒーの味の決め手となる焙煎という作業は、手塩にかけて育てるわが子同然。重要な工程を自分で気軽に手掛けられる新たな事業として「シェアローストサービス」がスタート。
Create Coffee Labの焙煎所でお好みの豆を自由に焙煎することができます。一般の方はもちろん、これからコーヒー店を始めたいと考えている方が準備をするのに活用するのも◎!
焙煎で肝心な煙の管理、火加減や温度管理などもデータを取りながら調整することができるので、より本格的な焙煎をしてみたい方はぜひお試しあれ。椎原さんいわく「基本的な知識があれば、焙煎は誰にでもできますよ!」とのこと。椎原さんに相談しながら焙煎してみるのも面白そう♪
すぐそばで、会話したくなるコーヒー店に
最近ではイベント出展や県内企業、飲食店からの引き合いも増え、また大分市内の県立高校の課題研究の講師やインターンシップも受け入れているそう。ほかにも、大分市が実施する日常生活に役立つ技能を磨くための学校「エスペランサ・コレジオ」でコーヒー学入門の講座も担当しているとのこと。まさに地域に根付いた活動にも積極的に取り組んでいます。
Create Coffee Labがこれから目指していきたいのは、“お客さまと距離の近いコーヒー店”。
「味の情報に加えて、私が産地に行った経験を生かし、生産者や生産地の環境、歴史などと一緒にお客さまにお話ししていけたら、コーヒーを入れるのも飲むのもさらに楽しくなるはず。私たちのようなロースターが飲み方やノウハウをもっと教えられるように勉強会なども開いて、コーヒーの魅力を伝える手段を身に着けて専門店としてできることをやっていきたいですね。あと、私が子ども好きなので、いつか教育に携わる事業もやりたいと思っています。子どもの教育に関わることはこれから一番大事になってくるような気がしています」。
対面販売のルーツとなっているお客さまと近い距離で、コーヒーとの接点を新たな視点で創り出していくのがこれからのテーマであると椎原さんが教えてくれました。
会社員のレールから大きく飛び出して、世界で次のステップと自分自身のやりたいこと、やるべきことを見つけた椎原さん。その行動力で思いを形にし続ける、たくさんのストーリーとともに注がれるアツい一杯を、ぜひ味わいに行ってみませんか。
- Create Coffee Lab
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https://www.createcoffeelab.com/
花高松店(焙煎豆の販売)
〒870-0915 大分県大分市花高松1-1-32
TEL:080-7829-4712
営業時間:10時~19時(水曜日のみ18:00閉店)
定休日:月曜日
https://www.instagram.com/createcoffeelab/中島店(カフェ)
〒870-0049 大分市中島中央1-4-36
TEL:097-560-1430
営業時間:10時~19時
定休日:火曜日
https://www.instagram.com/createcoffeelab_nakashima/焙煎所
〒870-0107 大分市海原934
WRITER
- 牧 亜希子記事一覧
planner/writer。特に大分県の観光情報が得意な自称「勝手に大分県の魅力案内人」。友人からのリクエストで旅行プランを立て、アテンドすることも。 特技/取材や撮影に行くことが多いにもかかわらず、「超」が付くほどの雨女。私の行き先ではかなりの確率で降らせます。取材先の皆様、ご了承くださいませ。