2021年の夏は、オリンピックの熱戦に感動と興奮冷めやらぬ毎日。大分県出身の選手を応援しつつ、いろんなスポーツにくぎ付けになった方も多いのでは！？
オリンピックの種目にもある自転車競技ですが、実は今、ロードレースで大分の名を全国にとどろかせている注目株のチームがあります。
大分県のプロサイクリングチーム「Sparkle Oita Racing Team（スパークルおおいたレーシングチーム）」。2021年７月に開催されたリーグ戦「広島トヨタ広島ロードレース」では、チーム結成半年で待望の初優勝を果たした、今最も目が離せない勢いのある新星のロードレースチームです。
８月８日（日）には日田市で初のホームレースを控えるSparkle Oita。ロードレースの魅力とともに、地元大分県でのレースへの意気込みを語っていただきました♪

大分県で４つ目のプロスポーツチーム、デビュー

今回お話を伺ったのは、Sparkle Oita Racing Teamの監督兼GMの黒枝美樹（みき）さん、チーム運営会社代表であり選手の黒枝士揮（しき）さん、チームキャプテンの黒枝咲哉（さや）さんのお三方。そうです、親子で2021年１月にチームを立ち上げ、４月に発足した国内初のロードレースリーグ「ジャパンサイクルリーグ（JCL）」に加盟し、全国９チームの一つとして参戦しています。
Sparkle Oitaには黒枝兄弟を中心に、７月のリーグ戦で優勝を飾った澤田桂太郎さん、宮崎泰史さん、孫崎大樹さん、小野寛斗さんと、これまでさまざまな大会で優勝経験のある国内トップレベルのスプリンターやオールラウンダー６名が所属しています。

大分のロードレースに黒枝兄弟あり！

大分市出身の士揮さん（兄）と咲哉さん（弟）は、自転車競技の名門・大分県立日出暘谷高等学校に通い、高校、大学で国体をはじめ数々の権威ある大会で兄弟そろって優勝に名を連ねてきた屈指の実力者。自転車競技で生きていくと決め、いつか大分でプロサイクルチームを立ち上げたいという夢をかなえたわけです。
チーム結成のきっかけには、士揮さんがかねてから温めていた思いがありました。
「イタリアのチームに所属していた時は、そこに暮らす人たちの日常に自転車が当たり前にあって。交通手段としてもそうですが、レースも毎週のように開催されていました。自転車と車が共存する、ヨーロッパに根付いている自転車文化をいつか大分に取り入れたいと思っていたんです。その第一歩として、Sparkle Oitaの活動をスタートしました」

制限ばかりの世の中になってレースがなくなり、トレーニングの日々の中で“自分たちの価値”について深く考えることが増えたという士揮さん。
「父と弟と３人で真剣に話をして、もう少し先の予定にしていたプロチーム立ち上げを今やらなければ、と決心しました」と、居ても立ってもいられない気持ちをプロチーム発足へと注ぎ、実現すべく心を奮い立たせたと士揮さんは語ります。１年ほどの準備期間で始動させ、士揮さんと咲哉さんは大分県出身で初のプロロードレーサーとなりました。

ファンファーストのクラブハウスが活動拠点

チームの活動拠点であるクラブハウスは、大分駅から徒歩10分の場所にあります。クラブハウスと呼ぶその場所の佇まいはカフェそのもの。

「そうなんです。“COLORS BIKE & CAFE”という、カフェと自転車ショップを併設したクラブハウス全体をファンミコミュニティのためのスペースにしています。近々パーソナルトレーニングジムもオープン予定。各部門とも選手がスタッフとして担当しています」と、美樹さん。
え、選手がコーヒーを入れてくれて、自転車のメンテナンスもしてくれて、ジムのトレーナーもしてくれるんですか！？
「朝から一日100kmを超える距離を走ってトレーニングをして、夕方からはスタッフとして私もコーヒーをドリップしています」と咲哉さん。
ふらりと立ち寄ってコーヒーも楽しめるし、サイクリストは自転車のカスタマイズもできるし、フィットネス目的でも通えるし、しかも選手が接客してくれるなんて。こんなにも身近にプロスポーツ選手にふれ合える多機能なクラブハウスは、おそらく全国唯一なのでは？

大分に新たな自転車文化を醸成したい

それぞれの目的でたくさんの人が交わるコミュニティスペースであるクラブハウスを拠点にしながら、Sparkle Oitaは大分のまちづくりに貢献したいという強い思いを抱いています。
「レースに参戦しながら“地域課題を解決するプロデュース集団”として、自転車と環境・健康・観光を掛け合わせ、大分を盛り上げていく事業に取り組んでいます。選手自らが正しい交通ルールを伝えられるように実践したり、自転車を利用した環境問題の改善を提案したり、サイクルツーリズムを通じて大分の郷土の魅力を発信していけたら」と、美樹さん。

実は大分県は自転車にまつわる場所が多い地域。国東（くにさき）半島の「仁王輪道（におうりんどう）」や佐伯市の「さいきりんぐ」などのサイクリングコース、さらに「OITAサイクルフェス!!!」や「ツール・ド・国東」といったイベントも多く開かれています。なぜこんなに自転車関連のスポットやイベントが多いのでしょうか？
「やっぱり大分の景色の素晴らしさがサイクリストを増やしているんじゃないですかね。大分には自転車だからこそ見える景色がたくさんあるので。それに走りやすい場所が多いんですよ。あとは自転車にアツい男がいるからだと思います」と、咲哉さんが話す“アツい男”というのは、美樹さんのこと。もともとマウンテンバイクが好きだった美樹さんが、前職時代に放置自転車をなくす取り組みや、大分への自転車の国際大会の誘致にも尽力されていたそう。美樹さんが密かにSparkle Oita誕生への種まきを早くから準備していたんですね。
「いえいえ、士揮と咲哉の二人がいてくれたから、今があるんです。二人のおかげです」と、チームの監督であり、父の穏やかな目をした美樹さんが照れくさそうに話してくれました。

ズバリ、ロードレースの魅力とは！？

これまでも数々のロードレースに挑戦してきた士揮さんと咲哉さんは、ロードレースのどんなところに魅力を感じているのでしょうか。

士揮さん
「100kmを超える距離を走るロードレースって、まち全体が競技場になるので、地域ごとの美しい景色や風土を感じながら走り抜けるのが最高なんですよ。そんな中でいろんな戦略を練りながらチームでどうやって勝つのかを考えるのがおもしろさの一つです」

咲哉さん
「風の抵抗と重力、そして相手と戦いながら、自分の力でつくり出すスピードを全身で感じるスリルはたまらないですね。観戦してくださる方にもそのライブ感は伝わると思います。あとは自転車のメカニックな部分もかっこよくて好きです。ぜひみなさんにもロードバイクに乗ってもらいたいです！」

Sparkle Oitaの選手と一緒に、大分や九州を走るサイクリングのイベントも開催しています。ロードレースの楽しみ方を直接教えてもらうのも◎！

大分、九州を舞台にロードレースを盛り上げていきたい

2023年には九州が舞台の「ツール・ド・九州・山口」という大きな国際大会も決定。Sparkle Oitaも国際登録をして、国際チームとしての参戦を新しいチャレンジに掲げているとのこと。

「JCLの総合優勝はもちろんですが、大分県と九州の素晴らしさを伝えるために全力で取り組めるよう、たくさんの仕掛けをしているところです」と、美樹さんが今後の展望を語ってくれました。
「まずは開催が目前となった初のホームレースにぜひ大分県のみなさんに足を運んでいただき、生で見てもらいたいですね。ロードレースの迫力を一緒に体感してもらえたらうれしいです」と士揮さんからのメッセージ。
「初めて観戦する方は、ゴール前の一番沸く瞬間をお見逃しなく！　大盛り上がりの空気感と臨場感を味わってもらえたら。10月に大分市で開催の“OITAサイクルフェス!!!2021”ではより近い場所で観戦できますよ」と、咲哉さんが初心者の方への観戦のポイントをアドバイスしてくれました。

ふるさと大分への思いとロードレースを愛するお三方の、情熱あふれる数々のエピソードにグッと胸をつかまれました。ぜひとも初のホームレースでは勝利をもたらしていただきたい！　Sparkle Oitaが繰り広げる熱狂と感動のステージを体感しに、ぜひ日田市のオートポリスレーシングパークへ！　そしてこれからの活躍を応援していきましょう♪

2021年８月　Sparkle Oita 初のホームレース開催！