おおいたではたらく
2022年06月10日
宇宙をもっと楽しく、面白く!
株式会社minsora代表取締役
今、大分で一番のトピックといえば『宇宙港』!
でも「宇宙港ってロケットの打ち上げ?」「なぜ大分が選ばれたの??」と思っている読者の方も多いかと思います。
宇宙港とは、人や人工衛星が宇宙に行くための港です。大分空港が選ばれた理由の1つがその立地。海に近く、離陸後すぐ洋上に出られることや、ロケットを搭載するジャンボジェット機が離着陸できる長さ3000mの滑走路があったためでした。
ロケットの打ち上げというと種子島宇宙センター(鹿児島県)のようにロケットを垂直方向に打ち上げる「垂直型」をイメージするかと思いますが、大分空港からは小型人工衛星が搭載されたロケットを母船に積んで、空中で水平方向にロケットを発射します。これが実現すれば大分空港はなんとアジア初の水平型宇宙港になるんです!
今回はこの大分の宇宙事業のキーパーソンにインタビューを行いました!
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- 業種
- 宇宙関連ビジネス
「地域から宇宙産業構造を変える。宇宙をもっと楽しく、面白く!」を企業理念に掲げ、宇宙利用のプロモーションに関する企画・実施・コンサルティング、宇宙を利用するための製品やサービス等のブランディング等をおこなっています。
社長インタビュー
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- 企業名
- 株式会社minsora
- お名前
- 高山 久信(タカヤマ ヒサノブ)
- 役職
- 代表取締役
大分市府内町にある株式会社minsora(略称みんソラ)の代表 高山 久信さんにお話をお聞きしました。
高山さんは豊後大野市出身。三菱電機株式会社やその関連グループで40年以上、宇宙の研究開発に携わってきました。
「入社してアンテナを作ったり設計をする部署にいたのですが、2年半ほどでプロジェクトを企画する部署へ異動になりました。計画立案から予算の算出、省庁や他の企業との連携をとるなど、1つのプロジェクトを実行するのには様々な仕事があります。成功させるためには、会社の中だけでなく、他の企業や省庁など横のつながりも大事です。たくさんのプロジェクトに携わった結果、いろんなネットワークができました」。
退社後も内閣府の宇宙開発戦略推進事務局など宇宙ビジネスナビゲーターとして宇宙に関連する事業に携わります。宇宙一筋ですね…?
「結果的にそうなりましたね。学生のころは学者になるのが夢だったんですが(笑)。でも経験がminsoraや一般社団法人おおいたスペースフューチャーセンターの活動に活きていると思います。
minsoraは【みんなの宇宙(ソラ)】を略してつけました。せっかくいままで培ってきた経験をみなさんにお伝えしたい、課題を持っている人にその課題の事業化をサポートしたいと思い会社を立ち上げました。自分の知見、ネットワークを使って大分県を一緒に盛り上げたい。かっこよく言うと、これは自分の使命だと思っています(笑)」。
minsoraのサービスについて
minsoraが取り組む4つの事業についてお聞きしました。
【1】cm級位置情報配信事業『CLARCS』(CLAS-based RTK Correction System)
「まず1つめは測位衛星『みちびき』のcm級の誤差しかない精度の位置情報を活用していただくため、CLARCSを利用した事業支援を行なっています。現在動き始めている事業は2つ。トラブルで動けなくなった車いす利用者の位置を特定し介助サポートするサービス、それとゴミ収集運搬効率化システムです。これは株式会社BIOISMとともにゴミ収集ルートの最適化や収集業務の効率化をするサービスです。株式会社BIOISMはIoT・AIを活用し、ごみ収集業務の効率化を牽引する会社です。2020年には『第18回おおいたビジネス オブ ザ・イヤー』や『第17回大分県ビジネスプラングランプリ 最優秀賞』を受賞、2021年には経済産業省中小企業庁の『2021 はばたく中小企業・小規模事業者300社』への選定など、その活躍に注目が集まっています。株式会社BIOISMとminsoraが協働することでサービスの精度が大きく向上しました。 観測データというと取っ付きにくいと思われがちですが、日常のゴミの問題は身近に感じることができると思います。アイデア次第で新しいビジネスができるということを知っていただきたいですね」。
【2】宇宙ビジネスコンサルティング
「2つめは企業や自治体を対象に宇宙をキーワードにした付加価値サービスの企画立案や新規事業の創出のコンサルやアドバイスをいたします。宇宙関連のイベントやプロモーションなどの企画も行います」。
【3】『宇宙』を基軸にした地域活性化支援事業
「3つめは国や自治体が実施する宇宙事業の広報や新たな事業創出に向けた受託事業、大分県の宇宙ビジネス創出拠点である一般社団法人一般社団法人おおいたスペースフューチャーセンター(以下 OSFC)の運営サービスを行います。今年2月26・27日には『第33回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)大分別府大会』開幕前の地元イベントとして『おおいたそらはく』を開催いたしました。 今後も地域の活性化と宇宙ビジネスの拡大に貢献したいと考えています。 」
【4】人材育成セミナー
「4つめは人材育成のサービスです。私は今までたくさんの宇宙のプロジェクトに関わってきましたが、先にお話したようにプロジェクトを成功させるためには人とのコミュニケーション能力や交渉術、プレゼンテーション技術が必要です。これは宇宙に限らず様々なビジネスにも活用できます。このサービスでは実際に行った宇宙プロジェクトを使って戦略的なプレゼンテーション能力の開発やキャリアアップにつながる研修プログラムを提供します。新人研修や管理職研修にも役立つプログラムになっていると思います」。
現在すでに様々な分野の企業から相談がきているそうです。企業の新規事業開発だけではなく、一次産業のデータ活用も期待されます。
「いままでは中央から地方へ企業誘致をして雇用を生み出していましたが、これからは大量生産ではないニーズにあったものをつくることが重要です。衛星の観測データからは大分の気候や土壌など様々な情報を得ることができ、農業・漁業・林業など一次産業に活用できます。地方の課題解決、本当の活性化に『宇宙』が活用できるかもしれません」。
全国から注目を浴びる大分に
アジア初の宇宙港として国内外から注目を集めている大分県。宇宙港ができるきっかけになったのは大分空港の立地のほかにも、別府や湯布院などの温泉地が近いこともプラスに働いたそうです。打ち上げを見る観光客や国内外の技術者が多く滞在することが予想されますが、空港以外の魅力も味わってもらえることが決め手の1つになりました。
とはいえ、ずっと住んでいると案外魅力には気がつきにくいもの。そこで、長く大分県を離れてから現在は大分に住む高山さんに、外と内から見た大分県の魅力を聞いてみました!
「大分に住んでいるみなさんが気づいてない魅力がまだまだありますよ。山・海・谷・川、ぜんぶがあり、風光明媚な場所がたくさんあります。観光はもちろんなんですが、たとえばドローンの練習場をつくるなど、いろんなアイデアを出せば土地をうまく活用できるんじゃないでしょうか?そうすればもっと世界にアピールできると思います。みなさん大分市内から大分空港へ1時間かかるのが遠いと言いますが、東京の人からすれば全然遠くありません。将来的にアメリカやイギリスから2時間で大分にくることができるようになれば、大分空港から県内のさまざまな市町村へ行くのも、さほど時間は気にならないと思います。今後打ち上げを見にくる人たちの観光・宿泊・飲食、それと打ち上げに関わる人たちの長期滞在の住居など、事業の可能性はたくさんあります。アピールはまだまだこれから。大分の良さをみなさんで発信していきましょう」。
学生からも『宇宙』を発信!
minsoraでは県内の大学・高校と宇宙に関する研究・授業の連携をしています。昨年は県内各地で宇宙教室も開催。子供たちが宇宙について楽しく学ぶ場作りにも力をいれています。
先日、OSFCの交流施設『スペースベースQ』にて大分東明高等学校 社会部による宇宙港周知企画説明会が開催されました。テーマは『宇宙港事業周知と大分市中心部活性化を主目的とした、歩行者天国でのクイズ大会イベントについて』。2021年度 内閣府主催『地方創生☆政策アイデアコンテスト2021』で九州産業局賞を受賞しました。受賞アイデアの1つが実際に5月28日(土)に開催された大分市中央通りの歩行者天国でクイズ大会。その企画のプレゼンテーションを聞きました。
社会部のみなさんは昨年度から宇宙港を活用した地方創生・商店街活性化を研究しています。大人に頼らず生徒たちだけで企画から外部との交渉、そしてイベントの運営を行ったそうです。
「今回は大分市での開催ですが、2回目3回目は他の自治体へ広げていきたいです。そして10年、20年と続けていって大分だけでなく他県の学生が参加するイベントにしていきたいと考えています」
説明会では実際にスマートフォンを使ってクイズを実施。時間の関係上1問だけでしたが参加した大人で盛り上がりました!(残念ながら私は外れてしまいました…(泣))クイズだと年齢関係なく楽しみながら宇宙の豆知識を知ることができ、とても素晴らしい企画だと思いました。今後の活動に注目です!
カテテ世代のみなさんに伝えたいこと
「minsoraを始めたときは2名だったのが現在は10名になり、今年は新卒採用もいたしました。だんだんと世の中に関心を持っていただいている実感があります。宇宙という分野はいろいろな職種に関わる可能性があります。宇宙というのはいわゆるゾーンです。その中に自分のやってみたい職種が入っているかもしれません」。
OSFCスペースベースQの学生会員。宇宙ビジネスを学ぶために普段からここで勉強しています。最後にカテテ世代のみなさんへメッセージをお聞きしました。
「まずは恐れず、自分が発想したことにチャレンジしてもらいたいですね。わからないとそこで断念するのではなく、追求することが大事です。たとえば宇宙に興味があれば、ここに来てなんでも質問してください。自分のアイデアに宇宙が加わればなにか変わるかもしれないですよね。
また今は場所は関係なく、発信もすぐにできます。SNSを使えばすぐに世界とつながることができます。アイデアもチャンスもすぐそこにあります。自分の思いついたサービスが起業するきっかけになるかもしれません。若い方が起業し、会社ができていけばそれが地域活性化の一端を担うことになるのではないのでしょうか?
与えられたものではなく、自分で創る。それをおもしろがる。とにかくチャレンジする気持ちを持ち続けてほしいと思います」。
- 企業データ
株式会社minsora
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美味しいもの、猫、温泉、旅行が好きです。子供のころは久住の大自然の中で育ちました。福岡に住んだこともちょこっとあり。大分の行ってないところ&食べていないものを発掘中。