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おおいたをたのしむ

2024年01月26日

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

こと地方においては、高校卒業後は市・県外への進学・就職を考えるのが通例のようになっていて、ご多分に漏れず、大分県佐伯市でもほとんどが市外への進路を選択。高校生の多くが、都会への憧れや挑戦したいというポジティブな目的を持ちつつも、心のどこかで「地元には何もない」「地元にいても将来のことを考えられない」と思っているのが現実なのかもしれません。
そんな中、「高校生が佐伯のことを知らないままに、市外に出てしまうのはもったいない!」と佐伯の大人たちが面白い仕掛けを企てたスポットがあるという情報をキャッチ。詳細を探るべく、佐伯市船頭町せんどうまちエリアへ出かけてきました。

商人の町にできた高校生の未来につながる拠点

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

江戸時代、佐伯藩の船着き場であり商人の町だった船頭町。ノスタルジックな雰囲気漂う通り沿いにある元歯科医院をリノベーションした一角に、カフェ機能とコミュニティスペース機能を持つ「café + community KIISA(キーサ)」が2023年5月にオープンしました。KIISAは、高校生が地域や大人と繋がるきっかけをつくり、地元・佐伯との関係性や将来の選択の幅を広げるためのハブとなるために作られたそう。

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

今回お話しを伺ったのはKIISAを設立したこちらのお二人。一般社団法人KIISAの代表理事である富崎とみざき 一真かずまさん(右)と、理事の河野かわの 功寛かつひろさん(左)です。

富崎さんは熊本県出身。以前は都会で働いていましたが、働き方や暮らし方に疑問を持つようになっていたそう。そんな時に縁あって佐伯市に足を運ぶようになり、一カ月の滞在を経てコロナ禍に移住を決意。佐伯市に移住した当初は、地域の人や学校帰りの高校生がふらりと立ち寄れる回転焼き店を営んでいました。

河野さんは大分県臼杵市出身で、現役の佐伯市役所の職員。
「市の建築職員として働く中で、もっとまちづくりに携わりたいと考えていました。約7年前には、船頭町で空き家となっていた元旅館の建物を購入して、リノベーション作業を兼ねたワークショップなどを行いました。リノベーションで変化する過程をオープンにし、多くの人に関わってもらいながらの場づくりが楽しかったですね。富崎との出会いもこのワークショップがきっかけでした」。
建築技師である、河野さんの強みを活かしたまちとの関わり方に驚きです。

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

そのほかにも、船頭町で6年の間に21回開催したエリアイベント「船頭町市」(現在は終了)も運営。来場者も年々増え、イベントの認知度が上がってきたことを確信していた河野さんでしたが、佐伯市内の高校でこの活動について話をしたところ、ほとんどの高校生はこのイベントのことを知らなかったそう。
「高校生には情報が届けられていなかったと考えさせられました。ちょうどその頃、市役所の中で若手中堅職員が政策提案を行える機会があり、そこに参加したメンバー(KIISAプロジェクトチームメンバー:河野・塩月・小山・畑野)と、高校生がまちのことを知り、地域と緩やかな接点を持てる場があれば、高校生と大人と地域の関係の質が変わって佐伯の未来が好転できるのではないかと考えたんです。カフェのような場所で自然と聞こえてくる大人の話に耳を傾けたり、何か情報が拾えたり、その中で自分の興味と交わることを見つけられる、そんな場所を作りたいなと」。
その手助けができる場所を立ち上げるための民間人のパートナーとして白羽の矢を立てたのが、 佐伯に移住してまちづくりや場づくりの活動に関わっていた富崎さんだったのでした。
そこから、一般社団法人を立ち上げ、県の地域活力づくり総合補助金を活用して元歯科医院を改装し、 KIISAをオープンした二人。その思いと行動力に感動です。

未来の可能性を広げる、若者の味方

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA 高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

KIISAのレトロなつくりのカフェスペースには30ほどの客席があり、Wi-Fiと充電スポットを完備。高校生はドリンク半額という高校生びいきのカフェなので、友達とのおしゃべりや部活帰りの寄り道、テスト勉強などなど使い方は自由。高校生だけでなく、仕事や読書、ゆっくりくつろぎたい大人ももちろん大歓迎。コーヒーなどのドリンク、スイーツも充実しています。特に焼きたてのワッフル、絶品です!

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA 高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

「SAIKI(佐伯)」の地名を反転させて誕生した「KIISA」のネーミングには、「佐伯を逆転させる未来の取り組みをしよう」という思いが込められています。普段はカフェでありながら、高校生の地域参画やさまざまな情報の提供、自主活動のサポートを通じて多様な生き方や進路の選択肢の創出など、佐伯の高校生の未来を広げることを目的としたプロジェクトの拠点にもなっています。

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

佐伯で暮らす大人の生き方をのぞく「KIISA TALK」

ヒト、モノ、コトが繋がるコミュニティスペース機能を持つKIISA。大分県から委託を受けて、進学や就職・転職・UIJターンといった背景を持つ、さまざまな職種の佐伯市在住者をゲストスピーカーに招いたトークイベント「KIISA TALK」の開催も行っています。過去回ではシェアハウスのオーナーや大学生などが登壇。気になる分野で活躍している人の話を聞くのはもちろん、知らなかった領域にふれることで意外な方面への自分の関心のあることに気付けたり、佐伯での暮らしに新たな魅力を発見できたりするので、ゆるっと参加してみてくださいね。
(今後の開催予定はKIISAのHPからご確認ください)

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

河野さんは高校時代に地元と関わる機会がないまま大学進学で地元から離れたそう。
「つながりが途切れてしまったことがもったいないと感じた経験があるからこそ、佐伯の高校生にはKIISAを活用してふるさととつながっていてほしい気持ちがある」と語ります。
「KIISA TALK」で出会った大人や大学生、企業から佐伯のことや将来につながる情報を得たり、地元のネットワークが広がっていくことは、きっと人生の選択の手助けになるはずです。

高校生ライターが企業の課題解決ワークに参加して情報発信

KIISAでは、お客さんとしてだけでなく、イベントやプロジェクトの企画・運営に参画してくれる高校生を随時募集しています。その企画の中には、KIISAの活動記録を残すサイト「uroco(ウロコ)」の運営もあり、高校生が参加したKIISAのイベントやプロジェクトについて、高校生目線で事業の報告や感想を執筆しています。

今回の取材でurocoの高校生ライターの方にもお会いできました!

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

森﨑もりさき のどかさん 佐伯鶴城高等学校 2年生

高校の部活仲間に誘われて、大分県とKIISA主催の地元企業との連携事業「みる しる かく きかく」で、佐伯広域森林組合の見学に参加しました。今回はurocoに掲載するレポートと、佐伯広域森林組合の就職説明会用のチラシの原稿制作も担当します!
KIISAでは、社会に関わる貴重な経験を通じて佐伯市の企業のことを知れて、なによりも自分自身が意外と佐伯のことが好きだったことに気付きました。県外の大学を目指していますが、将来最終的には戻ってくる気がしています。それまで今と変わらないふるさとだといいなと思っています。

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

KIISAで新たな発見がたくさんあったと語る森﨑さんの企業見学の様子は1月以降に更新予定です!ぜひチェックしてみてください♪
https://uroco.kiisa.or.jp
「みる しる かく きかく」の企業見学実施後にNBU日本文理大学附属高等学校のユーチュー部4名によるショート動画の制作も行われ、森﨑さん担当のチラシと一緒に佐伯広域森林組合の担当者にお披露目をしたそうです。企業を”みる”、”しる”という企業見学の取組みだけではなく、その内容を記事に”かく”、チラシや動画を”きかく”するところまで高校生が実施したとは!本当に感心させられました。

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA 高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

そのほかにも、高校生がやってみたいと思う企画は大小に限らず実現できる方法を富崎さんと河野さんが一緒に考え、サポートしてくれます。イベントに出店したい高校生に対して、どうしたら出店できるかを一緒に調べて、スタッフは何人必要なのか、原価計算はどうなるのか、ターゲットはどうするかなどをまとめ、KIISAでの出店を高校生に任せてみるという取組もあったそう。ほかにも、佐伯豊南高等学校の家庭部が料理のコンテスト用につくったメニューを、地域の人たちに食べてもらう場づくりもしたんだとか!

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

「みんなやりたいことはあるけれど、それを立ち上げることに対してハードルが高いと思っているんです。自分でテーマを決めてスケジュールを立てて最終的にゴールに導くような機会は、学校教育のみでは決して多くは設けられないと感じています。なので、最初のテーマ決めからサポートしながら、何が好きなのかとか、最近心が動いたのは何なのかといった話から少しずつ進めて、そういうことに慣れたらみんなでやろう!と導いてあげられたら。特にやりたいことがなくても“みんなで一緒にしゃべろう!”という感覚でKIISAに集まってくれたら、そこから生まれるものもあると思います」と富崎さん。個人での取り組みもできるようにKIISAに訪れる高校生には積極的に声掛けをしているとのこと。KIISAと一緒なら、やりたいことが果たせそう!

関わりしろ・伸びしろ、可能性しかない佐伯市

富崎さんは佐伯市に移住する際、ほかの市町村も検討していたそうですが、“あえて”佐伯市を選んだそう。「佐伯市は伸びしろ・関わりしろがある地域なんですよ。ここで地域や人、企業と、これまでやってこなかったふるさとの希望みたいなものを見せられたら、若者が面白がってくれるんじゃないかな」と富崎さんは高校生に伝えていきたいことがたくさんあるそう。

「切り口は無限にありますね。佐伯市はあらゆる資源が豊富で人口もそれなりにいて、スモールスタートでの起業にも合っているし、活動しやすいサイズ感のエリアだと思います。新しいことを始めるのに佐伯市はぴったりだと思います」と河野さん。職種や活動のジャンルも広げやすく、それぞれの生き方ややりたいことが展開しやすいチャンスがたくさん待っている佐伯、伸びしろしかない!

高校生と大人と地域の未来を結ぶ café + community KIISA

若者がより良い人生の選択ができたり、いつか佐伯に戻ってきたいと思えたりするような、地域との関係の質を上げていきたいと願う富崎さんと河野さん。これからの展望を最後に教えてもらいました。

「僕は、佐伯の企業の困りごとや悩みを高校生のアイデアで解決する事業をやりたいと思っています。大人では想像できない高校生の斬新な考え方で課題をクリアできたらいいですね。そんなふうに高校生が社会に関われたら、地元のことをもっと知りたいと思うきっかけになりますし、高校生の会社を立ち上げることもできるかもしれません」と富崎さん。そんな循環ができたら、さらにおもしろい展開が待っているでしょうし、大学受験や就活でのアピールにもなりそう♪

「私は大分県から出ずに大学で建築を専攻して、その学びを生かした職種に就きました。真っすぐなレールをたどってきましたが、その中でもまちの空き家を買ったり、一歩踏み出すことで新しいつながりをつくることができたんです。人生は途中で路線変更しても今まで学んできたものがゼロになるわけではなくて、一つスキルを持って別のところに飛び込めたらより自由な選択ができますし、それはその人の個性や強みになると感じています。今はイメージしづらいかもですが、地域や大人との出会いや関わりが、きっと将来の選択の幅を広げ背中を押してくれるものになると思います。KIISAはそんな高校生を思いっきり応援する存在でありたいなと思うので、何か困ったり悩んだりしたらここに来てください」と、河野さんからは温かく、そして熱いメッセージを届けてくれました。

社会と地域に関わり、やりたいことをかなえるための方法を一緒にワクワクしながら考え、楽しんでくれる大人がいる佐伯市。いろんな人が、いろんな仕掛けをつくってくれている場所に飛び込めたら、ふるさとの未来や自分のこれからの生き方が変化する出会いがあるはず!
ふるさとを知りたい、ふるさとで何かやってみたいという自分の思いを大切にして、これからの進む道のヒントを探しに、まずはKIISAに出かけてみるのもいいのかもしれません。

cafe+community KIISA(運営 一般社団法人KIISA)
〒879-3302 大分県佐伯市大手町3-5-7 2F
090-7474-8774(富崎)
定休日 毎週月・火、お盆、年末年始
営業時間 水~金15:00~19:00、土12:00~19:00、日12:00~17:00
https://kiisa.or.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/kiisa_cafe/
UROCO

WRITER

  • 牧 亜希子
  • 牧 亜希子記事一覧

    planner/writer。特に大分県の観光情報が得意な自称「勝手に大分県の魅力案内人」。友人からのリクエストで旅行プランを立て、アテンドすることも。 特技/取材や撮影に行くことが多いにもかかわらず、「超」が付くほどの雨女。私の行き先ではかなりの確率で降らせます。取材先の皆様、ご了承くださいませ。

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