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おおいたをたのしむ

2025年11月14日

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる!
有限会社ジェイ・パック

大分県民なら、きっと一度は触ったことがあるはず。思わず指でなでてしまう、大分県を代表する銘菓「ざびえる」の箱を。このなめらかな独特の手触りのパッケージを生み出しているのが、由布市挾間町にある有限会社ジェイ・パックです。
「ざびえる」のパッケージがどのようにしてつくられているのか!? その秘密を探るべく、工場を訪ねました。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

「ざびえる」とともに歩んだ25年

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

今回お会いしたのは、ジェイ・パックの小野尚子さん。さっそく工場を見せていただくことに。
建物の中に入ると、機械の動く音が響き、ほのかに漂う紙の匂いが迎えてくれました。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック 「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

ジェイ・パックの歴史は、「ざびえる」とともに歩んできました。
かつて「ざびえる」の箱は、大分市にあった企業の一部門でつくられていましたが、廃業を余儀なくされることに。ただ、「ざびえる」のトレードマークであるこの箱を残したいという声に応えて、その企業の社員の一人だった小野さんの父が、「ざびえる」のパッケージをつくるために立ち上げたのが現在のジェイ・パックです。2001年にジェイ・パックを創業して以来、今も変わらないクオリティーでつくり続けています。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

紙に繊維を吹きつける!?「フロッキー加工」

ジェイ・パックの主力技術は「フロッキー加工」。紙の表面に極細の繊維を吹き付けて、ベルベットのような質感を出す特殊印刷です。まるで魔法の粉をまとわせるように、繊維が紙に舞い降り、つるりとした紙からあのモフモフ質感に変身! 印刷されたデザインの上にこのフロッキー加工を正確に重ねることができるのが、ジェイ・パックの技術の強みなのです。

取材したこの日は、「ざびえる」の箱のフロッキー加工と、箔(はく)押しの作業中でした。「ざびえる」の箱は1日に1万2000個つくられているとのこと。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

デザインを印刷した紙をセットし、糊をのせ、フロッキーを吹き付けます。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

フロッキーがしっかり紙に接着しているか、真剣なまなざしで、くまなくチェック。

フロッキー加工の次は、「ざびえる」の金色の文字を「箔押し」し、最後にパッケージの型に抜いて組み立てる作業へと進みます。

※高級感を演出する加工の一つで、金や銀などの光沢のある箔を熱や圧力で紙に転写する特殊印刷。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック 「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

パッケージの決められた位置に、目にも止まらぬ速さでドンピシャに箔押しする作業を担当していたのは、製造部長を務める小野さんのお姉さん。姉妹お二人が中心となってジェイ・パックを盛り立てています。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

できたてのパッケージ。真っ黒なフロッキーに箔押しのゴールドと赤い縁が映える、何年経っても色あせない美しいデザインです。

女性のチカラで支える工場

現在、ジェイ・パックの工場で働くのは少数精鋭の7人。全員が女性です。
「昔は職人気質のおじちゃんばかりだったんですよ」と笑う小野さん。今は、段取りの良さとチームワークで現場を支える女性職人チームに。
「みんな時間の使い方が上手で、何時までにこれを終わらせようとそれぞれのセクションで考えてしっかり動いてくれています。多能工化も進み、一人が複数の機械を扱えるようになったんです」。
女性の細やかな気配りが現場を支え、仕事の効率化には欠かせないとのこと。力仕事が必要な場面では工夫を重ね、長年の経験による知恵とチームワークで丁寧かつスピーディーに仕事を進めています。お互いに助け合いながら働く姿は、まるで家族のような温かさがありました。
「ここにいるメンバーは10年以上のベテランがほとんど。スタッフみんなが会社の宝です」と小野さんは語ります。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

作業の中で特に大変な工程を聞いてみました。
「紙って生き物みたいなんです」と小野さん。湿度や気温によって伸び縮みするため、機械が同じ設定でも仕上がりがまったく変わってしまうのだそう。
「大変なのは、日々違う条件の中で、フロッキーをデザインぴったりにのせられるように位置を合わせることですかね」と、とにかく見当を合わせることが一番気が抜けないポイントだと語ります。
「梅雨の時期は最悪ですよ(笑)。湿気で紙がうねってしまうと、1ミリのズレで全部やり直しになるんです。フロッキーものらないんですよね」。
紙の厚み、季節ごとの気温、湿度まで読み取って調整するのは、まさに経験があってこそ。その記録も常に取りながら、原因を分析し、日々調整を重ねています。

「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック 「ざびえる」のあの“モフモフ”の箱はここで生まれる! 有限会社ジェイ・パック

手作業での工程も多く、箱の形状が特殊な「ざびえる」のパッケージは今でもすべて人の手で仕上げられています。重い紙を抱え、1人で機械を2台、3台と使いこなし、丁寧な手仕事で仕上げる。その一つ一つの作業をてきぱきとこなすスタッフの皆さんの姿は、凛々しく、頼もしさも感じ、とにかくかっこいい! 思わず見とれてしまいました。
「高い品質を保ち、効率化を図りながら手づくりする、それが私たちのこだわりです」。こうした“職人たち”の思いが「ざびえる」の箱の特別感を生み出しているのです。

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捨てられないモノをつくる

最近では、自社オリジナルの紙製品の開発にも挑戦中。ポストカードやブックカバー、今後デビュー予定のフェルトのような質感のマルチケースなど、触ると癒される、フロッキー加工がポイントになったデザインの商品が生まれています。大分県らしさがあふれるかわいいイラストのポストカードや、ファンキーなカラーの個性的な浮世絵のはがきはプレゼントにもぴったり。
「デジタル化が進み、紙に触れる機会が減っているからこそ、手触りのあるものを日常に届けたいんです」と語る小野さん。
フロッキーが光の角度で輝く様子は、高級感がありながらも、見た目の美しさだけでなく、触れるたびに心がやわらぐような温かさがあります。
ステーショナリーのInstagramはこちら

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“パッケージ”は、使い終わると捨ててしまうものを想像しがちです。しかしジェイ・パックが目指すのは、その逆。
「どうせ捨てられるものだからと言われることもあるんですけど、私たちは“捨てられないものづくり”を目指したいんです」。
フロッキー加工されたパッケージは、商品の付加価値を上げ、特に贈答用に使うものは、作り手の商品への思いや、受け取った相手を敬う心といった、目に見えない“モノ”も一緒に贈る役割を担っています。フロッキー加工は、包装技術を超えて、“思いを包む箱”として生き続けていることもジェイ・パックの誇りになっています。

次世代へつなぐ、ものづくりの現場はSNSでチェック!

ジェイ・パックのインスタグラムをのぞくと、製品の紹介や働くスタッフの姿が写っています。
「包み隠さず、どんなふうに製品ができているのか見ていただきたいです。“フロッキーってなに?”から、“フロッキーっていいよね!”につなげていきたいです」、そう話す小野さん自身がSNSの発信を担当。思わず笑ってしまうハッシュタグにもご注目ください!
Instagramはこちら

ファミリーのようなチームの女性たちが力を合わせてつくる由布市の小さな工場。そこには、長年愛されてきたお菓子の顔を支える、大きな自信とものづくりへの情熱が息づいています。

有限会社ジェイ・パック
〒879-5515
大分県由布市挾間町三船字泉740番地
TEL 097-586-3730
https://www.jpack.jp/
https://www.instagram.com/jpack_oita/

WRITER

  • 牧 亜希子
  • 牧 亜希子記事一覧

    planner/writer。特に大分県の観光情報が得意な自称「勝手に大分県の魅力案内人」。友人からのリクエストで旅行プランを立て、アテンドすることも。 特技/取材や撮影に行くことが多いにもかかわらず、「超」が付くほどの雨女。私の行き先ではかなりの確率で降らせます。取材先の皆様、ご了承くださいませ。

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