おおいたをたのしむ
2022年09月16日
塩田千春展『巡る記憶』
すっかり秋の気配がやってきて過ごしやすい季節。
今年の秋は“芸術の秋”なんていかがでしょうか?
というのも、大分県は2022年「東アジア文化都市」に選定され、多くのアーティストが来県したり様々な芸術やアート作品に触れる機会が満載!(日本は大分県、中国は温州市・済南市、韓国は慶州市が2022年東アジア文化都市に選定。)
今回はその一環として開催されている塩田千春展『巡る記憶』におじゃましました。別府市内の2会場で開催中とのことですが、会場別に作品は異なるとのこと。赤い看板を目印に、まずはBEP.Lab(ベップラボ)から!
卸問屋の跡地に広がる“白”の世界
卸問屋である「草本商店」の元倉庫に広がっていたのは白の世界。足を一歩踏み入れると、そこには神秘的かつ幻想的な世界が広がっていました。
細い糸を組み込んだ作品『巡る記憶 – 草本商店』は、塩田さんがかつて別府を訪れた時に見た湯けむりからインスピレーションを得てできた作品。日本一の湧出量を誇る別府の地熱循環からなる生命の神秘…思わず息をのむほどです。
塩田千春
『巡る記憶 – 草本商店』2022
©JASPAR, Tokyo, 2022 and Chiharu Shiota
撮影:サニー・マン
©混浴温泉世界実行委員会
今回のインスタレーションはすべて『巡る記憶』のためだけに制作した塩田さんのオリジナル作品。今いない人の想いを巡る、不在の中の存在。そこには誰もいないのだけど、どこかに気配を感じ、その時の思い出と自分が共鳴するという塩田さんの作品感は今回だけに限らずこれまでも作り続けているテーマ。ご自身の経験や身近なことを表現し続けています。
3Fでは塩田さんのドローイングや版画も鑑賞することができます。糸の世界からドローイングへと続く階段や、会場の最後の通路など塩田さんの手がける世界観がぐっと感じられる仕掛けがいっぱい。ぜひ実際に体感してみてください。
塩田千春さんPROFILE
Chiharu Shiota Berlin, 2020 Photo by Sunhi Mang
塩田千春 Shiota Chiharu
1972年、大阪府生まれ。ベルリン在住。
生と死という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求しつつ、その場所やものに宿る記憶といった不在の中の存在感を糸で紡ぐ大規模なインスタレーションを中心に、立体、写真、映像など多様な手法を用いた作品を制作。2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2015年には、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表作家として選出される。
森美術館(2019年)、南オーストラリア美術館(2018年)、ヨークシャー彫刻公園(2018年)、などを含む世界各地での個展のほか、シドニー・ビエンナーレ(2016年)、瀬戸内国際芸術祭(2010年)、などの国際展にも多数参加。
別府でのリサーチをもとに制作した作品はどれも今回だけのオリジナル作品とのことで、是非多くの人に観て触れてほしいと話すのは、プロジェクト広報担当者・久保優梨子さん。(混浴温泉世界実行委員会 事務局)
「世界的に活躍する塩田さんの作品を、私たちの身近で観られるまたとない機会だと思います。糸を使って表現する塩田さんの想いや世界観をぜひ感じてください!」
別府と共に歩んだ中華園が舞台“赤”の世界
続けて久保さんと歩いて向かったのは、もうひとつの会場。なんと中華料理屋さんの跡地!
「別府の繁栄期とも言える昭和50年代は観光客も数多く訪れていました。ここは、その時代と共にあったお店でオーナーも当時の思い出は印象深いそうです。その頃の食器や食品サンプルなどをそのまま作品として使用しているんですよ」(久保さん)
先ほどのBEP.Labとは打って変わって、当時の別府の賑わいを彷彿させるような赤が印象的!まさに、そこに存在しない人の想いや記憶が紡がれた空間です。食器やヤカンがこんな風にアートになるとは…圧巻です。
塩田千春
『巡る記憶 – 中華園』
2022
©JASPAR, Tokyo, 2022 and Chiharu Shiota
撮影: サニー・マン
©混浴温泉世界実行委員会
オリジナルグッズも!
今回の個展に合わせてオリジナルグッズも販売中。中華園から徒歩2分ほどの場所にある「SELECT BEPPU」ではTシャツやバッグなど塩田さんの作品をモチーフとした様々なグッズがずらり。
オンラインショップでも購入できます!
またサテライト会場「platform05」では、過去の塩田さんの作品制作に関連した映像なども楽しめますよ。
撮影: サニー・マン
©混浴温泉世界実行委員会
塩田千春展『巡る記憶』は2022年10月16日(日)まで開催しています。
彼女の放つ圧倒的かつ繊細な想いや世界観を、この機会にぜひ感じてくださいね。きっと今まで感じることのなかった感覚や、忘れかけていた大切な記憶が巡ってくることでしょう。
- 塩田千春展『巡る記憶』
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- 塩月 なつみ記事一覧
かぼすポン酢をこよなく愛する生粋の大分女。美味しいものが大好きで、おなかがすくと途端に不機嫌になります。大分トリニータを中心に、企業や観光、飲食などオールジャンルで取材撮影中!
東アジア文化都市とは…
「東アジア文化都市」は、日本・中国・韓国の3か国において、文化芸術による発展を目指す都市を選定し、各都市で様々な文化芸術イベント等を実施するものです。
『東アジア文化都市2022大分県』Webサイト