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おおいたをたのしむ

2016年09月16日

たけた有機藍染「紺屋そめかひ」

アーティストが移住したくなるまち、竹田市。

竹田といえば、岡城址、滝廉太郎、銘菓「荒城の月」、名水百選の湧水群、姫だるま、丸福のからあげ(鶏好きは外せませんよね) 、ソフトクリーム王国。。。魅力でいっぱいですが、近年「移住」で全国から注目されているのをご存知でしょうか?

竹田市は全国に先駆けて2009年に「農村回帰宣言」を行い、移住促進に取り組んでいます。
移住を希望する方々に空き家情報を提供する「空き家バンク」や、地域の情報に詳しい集落支援員による相談対応など、きめ細かい移住支援サービスを提供しています。

また2014年には、市民の文化活動や移住者獲得につながる取組として「竹田市アート・レジデンス」プロジェクトをスタート。
市内で創作活動を希望するアーティストの受け入れ先となる滞在施設を市民から募り、利用を希望するアーティストと登録者とのマッチングを図る「竹田市レジデンスバンク」という取組を進めています。

さまざまな分野で活躍するアーティストが移住している竹田市。今回から2回にわたり、竹田市で活動するアーティストをご紹介します。

工房にお邪魔しました。

まず伺ったのは藍染工房『紺屋そめかひ』。
国登録有形文化財の酒蔵をそのまま工房として使っています。

白の土壁にシンプルな藍染ののれんが爽やかで洗練された印象の店構え。
染色家の辻岡 快さん、奥様の由紀子さんが出迎えてくれました。お二人ともコーディネートに藍染のアイテムをさらっと取り入れていて素敵です。

店内は手ぬぐいやのれん、洋服、バッグなどの商品、趣味の骨董品が飾られています。

天井には竹田市長自らが筆をとり贈られた「紺屋」の看板が掲げられていました。

元酒蔵ということが一目でわかる日本酒の銘柄が書かれた壁。「美少年」が気になります。

以前はお隣の豊後大野市で廃校となった小学校を工房にしていましたが、小学校が使用できなくなったため4年前に竹田市に移住。行政の移住・定住の手厚いサポートと芸術文化に対する姿勢が決め手となったそうです。

また自然豊かな竹田市は制作環境に最適です。紺屋そめかひのコンセプトは「たけた有機藍染」。辻岡さんは人工の化学染料を使うのではなく、江戸時代から続く日本伝統の「天然灰汁発酵建」という天然原料を使う方法にこだわっています。染色に使う藍は近くの畑で有機栽培。また竹田市は水質が良く、染めた布の発色が良いとのこと。

確かに入り口にあるのれんや、店内にある作品、お二人が着ている洋服の藍色がとてもキレイだと思っていました。

でも今まで藍染のものは色移りすると思い、少し敬遠していた私。

「けっこう色移りしますよね?」と聞いたところ、

「いえ、天然の染料で染めたものはあまり色が出ないんです。色移りするのは化学染料を使ったものなんですよ」とのこと!驚きました。

染色を見せていただけるということで、早速作業場へ移動しました。

藍を建てる。

藍の染料を作ることを「藍を建てる」と言います。まずはその過程を見せていただくことに。

こちらは灰汁(木灰の上澄み液)を作っている樽。

藍の葉を乾燥させ、水をかけて発酵させた「すくも」と、透明になった灰汁などを混ぜ、さらに発酵させます。

発酵中のため毛布を巻いている樽。大事にされている様子は、まるで辻岡さんの子供のようです。

発酵して染色できる状態になった樽。手に取った染料は青というよりは茶色。これがきれいな藍色になるなんて不思議ですね。

このぶくぶくと浮いている泡のことを「藍の華」と呼ぶそうです。華の状態を常にチェックし、よい状態を見極めるとのこと。「手がかかる子供みたいですね」と言うと、「そうですね」と優しく頷く辻岡さん。まさに藍も家族の一員です。

実際に染色していただきました。

こちらのクッションカバーを作る布を染めていきます。

そーっと静かに布を染料に沈めていきます。色ムラができるため、決してジャブジャブしてはいけません。沈めて優しく揺すりながら、5分間待ちます。

5分後・・・

染まりました!でも藍色というよりは黄緑のような・・・

次は流水で洗います。だんだん藍色になってきました。澄み切った水に手をつけてみると、かなり冷たくて気持ちいい!きれいな水につけてもらって、藍も生き生きとしてきたようです。

洗い終わった布はきれいな藍色に。空気に触れて酸化することで徐々に藍色に変わっていきます。液につけて洗い、空気に触れさせてまた酸化させる。この工程を繰り返すことで深い藍色に染まっていきます。

作業後の辻岡さんの手。化学染料と違い、天然の藍は肌にも優しく無害のため、手袋無しでも問題はありません。昔から漢方薬としても使われており、口に入れても大丈夫。(実際に辻岡さんは発酵の状態を見るために、染料をぺろりとなめていました。)

他にも抗菌性、防虫効果があるなど、たくさんの効能が藍にはあります。昔の人は生活にうまく藍を取り入れていたようです。

藍染の他にも山ももの樹皮の染料で染めた鮮やかな黄色い布が天井にかかっていました。工房では藍以外にも他の植物で染めた色とりどりの作品を取り扱っています。

竹田で育った藍が出す色は。

竹田の土で育った有機栽培の藍と、きれいな水で完成する天然灰汁発酵建の辻岡さんの作品。その時々で出る微妙な色合い、重ねて染めることによって深くなっていく藍の色。

伝統的な方法で作るのは化学染料を使うより、何倍も手がかかります。でもこの方法でないと出ない色があるというのを、実際に自分の目で見て感じました。

染めた服は着ていると自然に少しずつ色が落ちていきます。「そめかひ」では購入後、何年たっても色の染め直しをします。
それは辻岡さんの「藍染の服は何世代にもわたって着れるもの。染め直すことによって代々受け継いで着てもらいたい」という気持ちからでした。

竹田市の名産品のひとつに「たけた有機藍染」が加わり、全国に広まって欲しい。
そう思いながら、工房をあとにしました。

次回は竹藝家・中臣一さんをご紹介いたします。

紺屋そめかひ

大分県竹田市竹田町21番地
0974-62-4188

WRITER

  • KANCO
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    美味しいもの、猫、温泉、旅行が好きです。子供のころは久住の大自然の中で育ちました。福岡に住んだこともちょこっとあり。大分の行ってないところ&食べていないものを発掘中。

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